The previous night of the world revolution7~P.D.~

「ではまず、手始めに」

ルリシヤはくるっとシルクハットを回したかと思うと、シルクハットの中に手を突っ込んだ。

すると。

何もなかったはずの帽子の中から、パタパタと音がした。

…何かいる…?

シルクハットから手を出すと、ルリシヤの手には鳩が留まっていた。

くるっぽー、ってなもんである。

何処に仕込んでいたんだ。その鳩。

パタパタ言ってたのは、鳩が羽ばたいている音だったのか。

「どうだ?ルルシー先輩」
 
「あぁ、うん…」

凄いんだろうけど、ルリシヤならそのくらい訳ないだろうな、とも思う。

何せこの男と来たら、ほぼ手ぶらでヘールシュミット邸の地下牢からも脱出するくらいだから。

「おぉぉ!凄い!何処に隠してたの?」

むしろ、ルーチェス嫁の方が喜んでいた。

「その鳩はどうするんだ?」

「あぁ、逃がす。駅の周りにたむろしていた鳩を連れてきただけだからな」

そう言って、ルリシヤは鳩を病室の窓から離してやっていた。

お前、このマジックの為に駅の周りに行って、鳩を一羽パクってきたのか。

怒られてしまえ。

「鳩だけじゃないぞ。この通り…」

ルリシヤは再びシルクハットに手を入れ、わざとらしく、ぐいぐいと引っ張ってから。

今度は、キラキラ光るリボンを取り出す。

何処に隠してたんだ。あんなでっかいリボン。

「うぉぉ、凄い!」

またしても、俺よりルーチェス嫁の方が喜んでいる。

「次はこれ」

次に帽子から取り出したのは、板チョコ。

次に、クマのぬいぐるみ。

果ては、『frontier』のCDまで。

どんだけ仕込んでたんだ、あの帽子。

とてもじゃないが、あの帽子の中に入る量ではないのだが?

「すごーっ!天才だ、天才!」

生まれて初めて見るルリシヤマジックに、大興奮のルーチェス嫁。

「異次元帽子だ、異次元帽子!凄いね!」

「そうだろう?お褒めに預かり光栄だ」

「他にもまだ出せる?飴ちゃん出してって言ったら出せるの?」

いや、それはさすがに無理なのでは?

異次元ポケットならぬ、異次元帽子のように見えるけども。結局はマジックの一種。

事前に仕込んでいたものしか取り出せないだろう。

しかし。

ルリシヤは、俺の予想の斜め上を行っていた。

「飴ちゃんか。ちょっと待ってくれよ」

そう言ってルリシヤは、帽子の中に手を突っ込む。

そして、わざとらしく探すような手付きで手を動かす。

え、嘘だろ?まさか。

いくらルリシヤでも、さすがにそこまでは、

「おぉ、あったあった。ほら、飴ちゃんだ」

あろうことか、ルリシヤは帽子の中からペロペロキャンディーを取り出した。

…マジで?

俺、もしかしてルリシヤのこと見くびってたんじゃないの?

まさか、リクエストされたものまで取り出してみせるとは。

やっぱりお前、マフィアの幹部じゃなくてマジシャンを目指すべきなのでは?

冗談だけど。