The previous night of the world revolution7~P.D.~

…黒かった。

その花束は、何もかも黒かった。

花も、茎も葉っぱも、包んでいる紙もリボンも。

何もかもが真っ黒の、漆黒の花束。

「…何で黒…?」

俺は呆然とそう呟いた。

「格好良いかと思ってな。ただの花束ではつまらないし。黒い花束にしてみた」

仮面越しでも分かる。そのドヤ顔。

…お前…。

シュノでさえ。シュノでさえすんでのところで踏み留まったんだぞ。

それなのに、お前を一線を越えてしまったのか。

アイズ。シュノを止めるなら、ついでにルリシヤも止めてくれよ。

「おぉ、凄い!良い趣味ですね、ルリシヤ」

俺よりも、ルレイアの方が喜んでいる。

ルレイアを喜ばせてどうするんだ。

「それに、これだけじゃないぞ。ルルシー先輩」

「あ…?」

「ルレイア先輩がいるとはいえ、ルルシー先輩もそろそろ、入院生活に飽きた頃かと思ってな」

そりゃまぁ…。楽しくはないけど…。

これでも、ルレイアがいるお陰でだいぶ気分転換になっているのだ。

「お世話」を抜きにすれば、何だかんだルレイアがいてくれて助かってる。

少なくとも、話し相手に困ることはないしな。

…え?四六時中ルレイアと話してて、話題に困ることはないのかって?

それはないなぁ、不思議と…。一日中喋ってても全然飽きないって言うか…。

まぁ、一緒にいて飽きる仲なら、今日に至るまでルレイアの相棒なんかやってないよな。

お喋りには飽きないが、一日中病院のベッドの上で過ごすのは、確かに飽き飽きしてきた。

いくら休暇だと思っても。寝て喋ってテレビ観て…の繰り返しだもんな。

それくらい余裕じゃないか、って思うだろう?

のんびりした気分を味わえるのは、精々一日二日程度だ。

あとはつまんないぞ。身体動かせなくてムズムズする。

そういう意味では、確かに飽きたと言えるのかもしれない。

「そんなルルシー先輩の退屈を紛らわせる為に…ルリシヤマジックショーをお見せしよう」

と言って、ルリシヤはくるくると指でシルクハットを回した。

あぁ。そういえば。

お前のちょっとした特技だったな。マジック。

普段から仮面をつけてるもんだから、凄く様になってるって言うか…。

マフィアの幹部じゃなくて、マジシャンの方が本職なんじゃね?って思う。

冗談だけどさ。

「どうだろう?わくわくしてきたか?」

「わくわく…は別にしないけど、よその迷惑になることはするなよ」

アリューシャみたいに大騒ぎをして、他の患者や医療スタッフ達の迷惑になってはならない。

ましてや今、ベッドの横にルヴィア嫁の持ってきたお面が飾ってあるせいで。

病室に足を運んだ医者や看護師の皆さんが、軒並みお面を見てビクッ、としてるからな。

今朝食事を持ってきてくれた看護師なんか、びっくりして悲鳴あげてたレベル。

そりゃこんなお面を見たら、誰だってビビるわ。

夜中に見たら、もっと恐ろしいからな。

本当にこれで怪我や病気が治るのか、甚だ疑問である。

折角ルヴィア嫁が持ってきてくれたから、感謝して飾っておくけどさ。