The previous night of the world revolution7~P.D.~

紅茶じゃない…?

「でもこれ…紅茶の匂いじゃないのか?」

俺はルレイアほど紅茶に詳しくないから、この香りはあの茶葉、みたいに分からないけど…。

「えぇ。これは華弦さんがシェルドニア王国から、シェルドニアツキノワヒグマの目玉茶です」

目玉茶!?

俺は思わず、口に含んでいたお茶を噴き出してしまった。

汚くて済まん。

しかし、俺と同様にルヴィアも噴き出していた。

だよな、そうなるのな?

ルレイアの衝撃の事実を聞かされ、平然とお茶を口にしているのは、ルヴィア嫁とルレイア本人だけだ。

…え?

今のって…俺の聞き違いじゃないよな?

「る、ルレイア…。お前今何て言った?」

「?シェルドニアツキノワヒグマのことですか?」

そうだけど。でもそうじゃない。

「そのクマの…何だって?」

「目玉茶ですか?」

やっぱり聞き違いではなかった。

目玉茶って言った。確かに目玉茶って。

いや待て。目玉は比喩かもしれないじゃないか。

目玉焼きだって、名前だけ聞くと「目玉を焼いた食べ物なのか?」って思うけど、蓋を開けてみるとただ卵を焼いただけだろう? 

それと同じかもしれない。

「それはその…何?まさかクマの目玉をお茶にする訳じゃないよな…?」

いくらゲテモノ揃いのシェルドニア食文化と言えど、まさかクマの目玉をお茶にするなんて。

そんな恐ろしいことをする訳がな、

「シェルドニアツキノワヒグマの目玉をほじくり出して、天日に干して磨り潰したものをお湯に溶かしたものだそうですよ」

するんだ。

そんな恐ろしいこと、するんだな。本当に。

シェルドニア王国の人々は、『白亜の塔』のお陰で非常に穏やかな国民性を持っている。

が、スーパーマーケットの実演販売と言い、何故食文化に関しては意外と残酷なのか。

クマの目玉を抉り出すなんて…。恐ろしいことを…。

つーか、何故それをお茶にして飲もうと思ったのか。

熊の胆が身体に良いから、目玉も良いと思ったのか?

まさか、クマの目玉からこんなに良い匂いがするとは。

どうなってるんだ、シェルドニア王国のクマ…。