The previous night of the world revolution7~P.D.~

10分後。

「淹れましたよー」

ルレイアが、人数分のティーカップをお盆に乗せて戻ってきた。

ちなみに、あのティーカップはルレイアの私物である。

従って、ティーカップの色は黒だった。

黒いティーカップって、見たことあるか?

飲み物が不味そうに見えると思うんだけど。ルレイアは全く気にしていないらしい。

「さぁさぁどうぞ。是非飲んでみてください」

「あ、ありがとうございます」

「アリューシャお気に入りのポテトチップスもどうぞ」

「…ありがとうございます」

ちょっと視線を逸らすルヴィア。

仕方ない。何せきなこもち味だもんな。

どんな味がするか分かったもんじゃない。

アリューシャのことだから、「期間限定」の4文字に惹かれたんだろうが。

期間限定だからって、美味しいかどうかは分からないよな?

「はい、ルルシーもどうぞ」

「どうも」

ルレイアが差し出したティーカップを受け取る。

うん、やっぱり良い匂いだ。

「くんくん…。ルヴィアさん、これとても良い香りですね」

「え?…うわ、本当だ」

ルヴィア嫁とルヴィアが、ティーカップから立ち昇る芳醇な香りを嗅ぎながらそう言った。

「フューニャの髪みたいに良い匂いがする。まぁ、フューニャの方が遥かに良い香りだけどな」

惚気も交えていく。

そういうことはな、言わなくて良いんだよ人前で。

心の中で呟いておけよ。このリア充め。

「香りだけじゃなくて、味も一級品ですよ」

ルレイアがティーカップ片手に言った。

俺も、ティーカップのお茶を一口飲んだ。

うん、やっぱり美味い。 

俺は昨日一回飲んだけど、それでもびっくりするくらい美味しい。

「うん、美味しいです」

「本当だ。凄い美味い」

クランチェスカ夫妻にも好評のようだ。

良かった、喜んでもらえたようで…。

「まるでフューニャが淹れてくれた紅茶のように美味しい…。まぁ、フューニャの紅茶の方が遥かに美味しいがな」

だから、惚気を交えるな。

「…そんなこと言って褒めても、何も出ませんからね」

そう言って、ぷいっ、とそっぽを向くルヴィア嫁。

しかし、その口元は緩んでいた。

…仲が良さそうで何より。

思わず「爆発しろ!」と叫びたくなってくるが、ここは病院なので必死に我慢する。

代わりに、ずずず、とお茶を啜った。

すると、ルヴィアがルレイアに尋ねた。

「でも、これ本当に美味しいですね。華弦お義姉さんが差し入れてくれたんですよね?」

「えぇ、そうですよ」

「へぇ…。さすが華弦お義姉さん。こんな美味しい紅茶を売ってるお店を知ってるとは…」

だよな。俺もそう思う。

でもよく考えてみたらあの人、シェルドニア王国にいたときは、仮にも王族であるアシミムの屋敷にずっといたから。

良いものとか美味しいものは、よく知っているのかもしれない。

…しかし、俺は失念していた。

華弦が知っている「美味しいもの」は、全てシェルドニア王国の食べ物であるということを。

「ん?これは紅茶ではないですよ」

と、ルレイアが言った。

…え?