びっくりした。
病院で大声をあげて、ノックもなしに病室に入ってくる奴があるか。
「この馬鹿アリューシャ。もっと静かに喋れ」
いくら個室とはいえ、そんな大声を出したら廊下にも、隣の部屋にも聞こえるだろうが。
病院では静かにしなさいって、アイズに習わなかったのか?
「だって病院ってさ、すげー辛気臭いじゃん?こんな辛気臭いところにいたら、治るもんも治らねーだろ?」
と、アリューシャは持論を語り始めた。
あ?
「だからここはカラ元気でも、明るく振る舞った方が早く傷が治るんじゃねぇか、ってアリューシャは思うんだよ」
「…成程…」
一理あるかもしれない。病院の非日常的な静謐とした雰囲気に、思わず気が滅入ってしまうことはある。
だったらカラ元気だとしても、大袈裟に明るく振る舞った方が…。
…って、アリューシャに騙されるな。
だからって大声出して良い訳じゃねーから。それとこれとは別だから。
「ってな訳で、アリューシャがお見舞いに来たぜ!」
「…あっそ…」
そりゃどうも。ようこそいらっしゃいましたね。
「傷の治りはどう?少しは良くなった?…やっぱりまだ痛い?」
心配そうな顔で尋ねてくるのは、同じくお見舞いに来てくれたシュノである。
つくづく、怪我をしたのが俺で良かったと思う。
これがもし、ベッドに横たわっているのがルレイアだったら。
今頃シュノは、こんなに落ち着いてはいられなかっただろうからな。
「だいぶ良くなってきたよ。…痛いのは痛いけどな」
「そっか…。…そうだよね、嫌なこと聞いてごめん」
「別に良いよ」
痛いけど、耐えられない痛みってほどではない。
さっきも言ったが、ルレイアが怪我をしたときに感じるであろう胃の痛みよりは、遥かに気が楽だから。
「あの、これお花…。持ってきたの」
そう言って、シュノは両手に抱えるほどの大きな花束を差し出した。
色とりどりの花が、甘く芳しい香りを立ち昇らせている。
「さっき買ってきたんだ」
「そうか。ありがとう」
素直に嬉しいよ。
ルレイアに「お世話」されるより、花束もらった方がずっと嬉しい。
…しかし。
「ルレイアもいるから、本当は黒い花束にしようかなと思ったんだけど」
「…え?」
な、何だそれ?
黒い花束?そんな花があるのか?
何で病室にルレイアがいるってだけで、真っ黒花束をチョイスしようと思ったのか。
確かにルレイアもいるけど、怪我したのは俺だぞ?
「アイズが、『病院で黒は縁起が悪いんじゃないかな』って言ったから」
アイズ、ナイスアドバイス。
お前が止めてくれなかったら、危うく真っ黒な花束を受け取るところだった。
変人揃いの『青薔薇連合会』幹部の中で、お前のような常識人の存在は、最早癒やしだな。
アイズがいてくれて良かった。
「やむを得ず、普通の花束にしたんだ。ごめんね、やっぱりつまらなかったよね…?」
何で俺が残念がってると思ってんの?
むしろ黒じゃなくて良かったと思ってるくらいだよ。
「いや、嬉しい。普通に嬉しいから」
「そっか…。ありがとうね、気を遣わせちゃって…」
別に俺、本当は黒が良かったなんて思ってないからな。
喜んでる振りをしてる訳でもないから。
黒じゃなくて良かったと、本気で思ってるからな。
病院で大声をあげて、ノックもなしに病室に入ってくる奴があるか。
「この馬鹿アリューシャ。もっと静かに喋れ」
いくら個室とはいえ、そんな大声を出したら廊下にも、隣の部屋にも聞こえるだろうが。
病院では静かにしなさいって、アイズに習わなかったのか?
「だって病院ってさ、すげー辛気臭いじゃん?こんな辛気臭いところにいたら、治るもんも治らねーだろ?」
と、アリューシャは持論を語り始めた。
あ?
「だからここはカラ元気でも、明るく振る舞った方が早く傷が治るんじゃねぇか、ってアリューシャは思うんだよ」
「…成程…」
一理あるかもしれない。病院の非日常的な静謐とした雰囲気に、思わず気が滅入ってしまうことはある。
だったらカラ元気だとしても、大袈裟に明るく振る舞った方が…。
…って、アリューシャに騙されるな。
だからって大声出して良い訳じゃねーから。それとこれとは別だから。
「ってな訳で、アリューシャがお見舞いに来たぜ!」
「…あっそ…」
そりゃどうも。ようこそいらっしゃいましたね。
「傷の治りはどう?少しは良くなった?…やっぱりまだ痛い?」
心配そうな顔で尋ねてくるのは、同じくお見舞いに来てくれたシュノである。
つくづく、怪我をしたのが俺で良かったと思う。
これがもし、ベッドに横たわっているのがルレイアだったら。
今頃シュノは、こんなに落ち着いてはいられなかっただろうからな。
「だいぶ良くなってきたよ。…痛いのは痛いけどな」
「そっか…。…そうだよね、嫌なこと聞いてごめん」
「別に良いよ」
痛いけど、耐えられない痛みってほどではない。
さっきも言ったが、ルレイアが怪我をしたときに感じるであろう胃の痛みよりは、遥かに気が楽だから。
「あの、これお花…。持ってきたの」
そう言って、シュノは両手に抱えるほどの大きな花束を差し出した。
色とりどりの花が、甘く芳しい香りを立ち昇らせている。
「さっき買ってきたんだ」
「そうか。ありがとう」
素直に嬉しいよ。
ルレイアに「お世話」されるより、花束もらった方がずっと嬉しい。
…しかし。
「ルレイアもいるから、本当は黒い花束にしようかなと思ったんだけど」
「…え?」
な、何だそれ?
黒い花束?そんな花があるのか?
何で病室にルレイアがいるってだけで、真っ黒花束をチョイスしようと思ったのか。
確かにルレイアもいるけど、怪我したのは俺だぞ?
「アイズが、『病院で黒は縁起が悪いんじゃないかな』って言ったから」
アイズ、ナイスアドバイス。
お前が止めてくれなかったら、危うく真っ黒な花束を受け取るところだった。
変人揃いの『青薔薇連合会』幹部の中で、お前のような常識人の存在は、最早癒やしだな。
アイズがいてくれて良かった。
「やむを得ず、普通の花束にしたんだ。ごめんね、やっぱりつまらなかったよね…?」
何で俺が残念がってると思ってんの?
むしろ黒じゃなくて良かったと思ってるくらいだよ。
「いや、嬉しい。普通に嬉しいから」
「そっか…。ありがとうね、気を遣わせちゃって…」
別に俺、本当は黒が良かったなんて思ってないからな。
喜んでる振りをしてる訳でもないから。
黒じゃなくて良かったと、本気で思ってるからな。


