「ルルシー先輩は今、治療中だ。安心してくれ、命に別条はない」

と、俺の代わりにルリシヤが答えてくれた。

そう、命に別条はない。

この一言のお陰で、俺はかろうじて冷静でいられるのだ。

「よ、良かった…」

シュノさんは涙を流さんばかりに、ホッと胸を撫で下ろしていた。

「ったくあいつよー、心配かけやがってよー!」

アリューシャも、文句を言いながらも安心したような顔をしていた。

「そう…。ひとまず安心したよ。でも…油断は出来ないね。『M.T.S社』の新兵器…レーザー銃だっけ、それを使われたんだよね?」

と、アイズが尋ねた。

「そうだな」

「レーザー銃の銃創を治療するなんて、医師達も初めてだろうからね。大丈夫だとは思うけど…」

「お、おいおいアイ公。こえーこと言うなよ」

「念の為に注意しておこう、ってだけだよ。大丈夫」

…。 

…大丈夫だと思いますよ。

ルルシーにもしものことがあったら、医療スタッフ全員ただでは済まさない、って脅してあるし。

何が何でも、ルルシーを助けてくれるだろう。

「レーザー銃…。それが『M.T.S社』の所有していた新兵器の正体だったのね。全然想像出来ないけど…」

と、シュノさんが言った。

シュノさん達は実物を見ていないから、イメージするのは難しいだろうな。

「アリューシャ、知ってる?レーザー銃なんて…」

「さぁ、アリューシャは自分の使ってるライフルのことしか知らねーわ。そんな武器があんのか」

「何が出てくるかと思ったら、また奇抜な武器を考えついたものだよ」

全くだ。

事前に知っていれば、もっと対策の立てようもあったのだが…。

…なんて、出来なかったことを愚痴っても仕方ないか。

「しかも、『M.T.S社』のリーダーと幹部達を匿っているという情報は偽物だったと来た」

「その件はどうなったんです?アイズ総長お抱えの情報屋だったんですよね?」

ルーチェスがアイズに尋ねた。

あぁ、是非とも聞きたいものだな。

俺達に偽情報を掴ませた情報屋が、なんという言い訳をするのか。

…しかし。

「うん。すぐに連絡を取ったんだけど…梨のつぶて」

「…」

「行方も分からない。私達から追及を受ける前に、夜逃げ同然で行方を眩ませたらしいね」

「…ってことは、情報屋は悪意を持って、僕達に偽情報を掴ませたんですね」

「そうなるね」

…世の中、ムカつく奴が多過ぎる。

『青薔薇連合会』に偽情報を掴ませた情報屋も。

帝国自警団のブロテも。

そして何より、ルルシーに傷を負わせた自警団員も。

ルルシーを撃ったのが誰なのか、ブロテに探させているが。

今のところ、ブロテから犯人を捕まえたという連絡はない。

ってことは逃したか…あるいは、ブロテが庇っているのだろう。

本当にムカつく。

「…あの…ルレイア、大丈夫…?」

恐る恐るといった風に、シュノさんが俺に声をかけてきた。

…はい?