The previous night of the world revolution7~P.D.~

来るの遅くないです?

「もう一度言う。マリアーネから離れて!」

だ、そうですよ。

ブロテは片手にレイピアを持って、その切っ先を俺に向けていた。

この拳銃女に比べたら、百倍は腰が据わってるな。

手も足も唇も、全く震えていない。顔には怯えではなく、怒りが滲んでいる。

さすがは帝国自警団団長といったところか。

ってか、この拳銃女。マリアーネって名前なのか。

帝国自警団のマリアーネ…と言えば、名前を聞いたことがある。

あぁそうだ、思い出した。

「ルルシー。この女、確か帝国自警団の団長代理やってたんじゃなかったですか?」

「あ…?そうなのか?」

ルルシーは覚えていないご様子。

まぁ、死ぬほど影の薄い団長代理だったからな。

こんなビビリ女だったとは。そりゃこんな女に自警団の団長代理なんか任せてたら、自警団の影が薄くなるのも当然というものだ。

「こんな腰抜けが団長代理…。情けない女ですよ。自警団、よく潰れなかったものですね」

マフィアの幹部相手に、腰が抜けて引き金も引けないほど肝の小さい女が。

本人も自覚はあるのか、図星を指されてマリアーネは泣きそうな顔になった。

すると。

「…これ以上、マリアーネを侮辱したら許さない」

激しい怒りを滲ませて、ブロテは力強くレイピアを握り締めた。

…ほう?

「腰抜けを庇うんですか?」

「マリアーネは腰抜けなんかじゃない。ルティス帝国を留守にしていた私の代わりに、立派に自警団を守ってくれたんだ」

腰抜けなんかじゃない(笑)。だって。

面白い冗談ですね。

「マリアーネを侮辱しないで。その子を離して!」

さっきも似たような台詞を聞いたな。

「離さなかったらどうなるんです?」

「…死ぬことになるよ」

成程。

さっきより遥かに、面白いお返事ですね。

「コントのつもりですかね?ルルシー。俺達死ぬことになるらしいですよ」

「お前が挑発ばかりするからだろ?離してやれ。どうせその女は何も知らないだろ」

「ですね」

ルルシーがそう言うなら、じゃあその通りにしますよ。

俺はマリアーネを放り投げて、ブロテに返してやった。

ベッドの上では別として、俺には婦女子をいたぶる趣味はないからな。

ベッドの上では別として、な。

「マリアーネ…!しっかりして」

放り投げられたマリアーネを、ブロテは必死に抱き起こしていた。

「ぶ、ブロテちゃん…。私…ごめんなさい、役に立てなくて…」

「そんなことない。マリアーネはいつも精一杯頑張ってくれて…」

噴き出すかと思った。

何の冗談ですか?

「必死に無能を庇って、団長って大変ですね。お前みたいな役立たずはクビだ!って言ってやれば良いのに」

と、俺は思わず本音を溢してしまった。

しかし、ブロテは耳聡くそれを聞きつけ、キッ、と俺を睨んできた。

おぉ怖。

「黙って。君には関係ない!」

「はいはい、そうですね」

その通り。自警団が、ブロテが無能を庇いたいんなら、好きにすれば良い。

馬鹿だなと思うが、俺には関係のない話だからな。