無論、本当に『青薔薇連合会』が偽情報に騙されるかは分からない。

もしかしたら、相手にしないかもしれない。

あるいは騙されたとしても、いきなり自警団本部に飛び込んでくるのではなく。

真偽の程を確かめる為に、ブロテ団長に電話を掛けるなり、手紙を書くなり、連絡してくるかもしれない。

何も知らないブロテ団長は、きっと馬鹿正直に答えるはずだ。

「帝国自警団でマフィアのリーダーを匿っているという事実はない」と。

ブロテ団長がこのことを知れば、彼女は間違いなく、『青薔薇連合会』との敵対を避けようとするはずだ。

しかし、それでは意味がない。

敵対してもらわなければ困るのだ。自警団と『青薔薇連合会』は。

買収された情報屋からの偽情報を受け、真偽の程を確かめる為に、ルレイア・ティシェリーが帝国自警団に奇襲をかけてくる。

これこそ、俺達が望む展開だった。

本当にそうなるのか、それはやってみなければ分からなかった。

恐らく、上手く行かない可能性の方が高かった。

それどころか下手をすれば、俺達が独断で動いていることをブロテ団長に知られ、帝国自警団を追い出される可能性すらあった。

だから、これはとても危険な賭け。

でも、俺は…俺達は、この危険を犯してでも、実行する価値があると思った。

だってこれがもし、上手く行けば。

今度こそ俺達は、ルレイア・ティシェリーの首に手が届く。

あの男の躯を、全ての死者…奴が苦しめた全ての人々…の前に、晒し者にすることが出来る。

とても魅力的だろう?

そのときの為に、俺達はいかなる努力も厭わない。

あと少し、あと少しでそれが叶う。

そして、この日。



何も知らない、愚かなあの男が…のこのこと殺されにやって来るのだった。