――――――…『霧塵会』、そして『M.T. S社』の一件が片付いた、その翌週。

…いや、厳密には片付いていないか。

だって、まだ『M.T.S社』のリーダーと幹部数人の行方が分かっていない。

あの後、リーダーの影武者と、近くにいた構成員を引っ捕らえて尋問したのだが。

案の定奴らは捨て駒だったらしく、どれだけ締め上げても何も出てこなかった。

俺達が知りたいような情報は、何も。

結局謎の新兵器が何なのかも、リーダーや幹部達が何処に逃げたのかも分からない。

拍子抜けも良いところだ。

…が、俺はそんなことはどうでも良かった。

『M.T.S社』のリーダーだの幹部だの、そんな奴らの居場所なんてどうでも良い。

あいつらが隠れて売り買いしている、謎の新兵器とやらについてもどうでも良い。

そんなことより…俺が心配しているのは、ルーチェスのことだった。

だって、心配にもなるだろう?

あのとき…『M.T.S社』を襲撃したとき、俺とルレイアは、ルーチェスを一人にしてしまった。

そしてルーチェスは、一人でいる間に…何かがあって意識を失い。

ついでに、襲撃当日の記憶が全くない、と言うではないか。

これを心配せずして何をしろと言うのか。

病院で調べてもらっても、結局何も分からなかったし…。

これが新兵器の影響なのかと、俺は戦々恐々としていたのだが。

ルレイアは何故か非常に楽観的で、「大丈夫ですよ、多分」とか言ってるし。

何ならアイズまで、「心配要らないと思うよ」なんて言うし。

極めつけは、ルーチェス本人である。

自分にそんな不思議な出来事が起きたというのに、全く怯えている様子はなく。

呑気に病室で、エロ本読んでる始末だからな。

あいつらは危機感というものがないのか?

何が起きてもドンと構えている…と言えば聞こえは良いが。

結局…肝心なことは何も分かっていないのだ。

それなのに呑気に構えているなんて、俺には出来ない。

ルーチェスのことは勿論、『M.T.S社』のリーダーや新兵器のことも。

だから俺は、一人であいつらの分まで色々と心配しているのだ。





…そうだというのに。




「ねぇねぇルルシー。執事喫茶に行きましょうよ!」

ルレイアは今日も、朝から非常に呑気であった。