The previous night of the world revolution7~P.D.~

「何処まで行っても、彼らは所詮マフィアだよ。私達の理屈や常識が通じる相手じゃない」

「だけど…。ルレイア卿は元帝国騎士団の隊長で…」

だから、決して悪い人ではないはず…。

「元、でしょう?今は違うわ」

「…そうだけど…」

「…俺も同感だな」

アンブロまでが、「彼」やユナに同意した。

「ルレイア・ティシェリーは、確かに帝国騎士だった。でもそれはもう10年も前のこと。どんな経緯があれど、今は『青薔薇連合会』の幹部なんだ」

…その通りだ。

帝国騎士だった頃のルレイア卿とは、まるで別人のようになっている。

根っこの部分は変わらないはず…と、私は勝手にそう思ってるけど…。

果たして私は…そんなルレイア卿の良心を信じて良いのだろうか?

無意識に楽観視しているのではないか?元帝国騎士なら大丈夫なはずだ、って。

根拠もないのに…。

「そうだね…。警戒しておくに越したことはないと、私も思うよ」

「シャニー…」

シャニーまで…。

「私達がルレイア・ティシェリーの良心を信じても、ルレイア卿の方は私達のことなんて何とも思ってない。それを忘れちゃ駄目だよ」

「それは…分かってるけど」

「一方的に大丈夫だろうと思いこんで、後で痛い目を見るのは私達なんだよ」

「…」

…そうだね。シャニーの言うことは理解出来る。

私は多分…自分に都合が良いように信じ過ぎている。

彼が元帝国騎士だからって…。

「…ごめんね、ブロテちゃん。私もそう思う」

「マリアーネ…」

普段は引っ込み思案で、あまり自分の意見をはっきり表明することのないマリアーネまでもが。
 
『青薔薇連合会』は、ルレイア・ティシェリーは危険だと認識している。

「ブロテちゃんの意見を否定する訳じゃないんだよ。でも…私は、『青薔薇連合会』がこれまで、色々な…悪いことをするのを見てきた」

「…」

「止めたかったよ。団長代理として、もっとしっかりしないとって…ずっと思ってた。だけど…怖かったの。一度『青薔薇連合会』に睨まれたら、私達なんてひとたまりもないだろうって」

マリアーネは、自身が帝国自警団の団長代理を務めていた頃の、苦しい胸のうちを語ってくれた。

…そっか。そうだね。

マリアーネも辛かったんだよね。

このルティス帝国を、『青薔薇連合会』という…マフィアに好き勝手にされて。

「ブロテちゃんに託された帝国自警団を、どうしても守り抜きたかった。何度も『青薔薇連合会』を止めなきゃならないと思いながら、でも反撃を受けるのが怖くて、何も出来なかったの」

「…それは、マリアーネのせいじゃないよ」

「…ごめんね、ブロテちゃん…。正義が何か、分かってたはずなのに…。何も出来なくて…」

…正義…。…正義、か。

このルティス帝国の大地で、好き勝手に暴れる『青薔薇連合会』を。

「彼らにも良心があるはずだから」と決めつけて、黙って見ていることが正義なのか。

いつか『青薔薇連合会』の牙が、自分達に向くかもしれないと分かっていながら。

事態を静観して、何の対策も取らずに呑気に構えていることが、本当に正しいのか。

私は帝国自警団団長として、真剣に考えなければならない。

帝国自警団の存続の為。そして何より…。

私達が愛する祖国。このルティス帝国の為に。