The previous night of the world revolution7~P.D.~

セカイさんと二人で、りんごと紅茶のケーキを食べた後。

僕はもう一つのケーキを、お隣に持っていった。

「こんにちは、ルヴィアさん。あ、もうこんばんは、の時間でしたね」

「…ルーチェスさん…!」

僕の顔を見て、ルヴィアさんは目を見開いていた。

何かついてます?

そんな見惚れるほど男前ですか?

「良かった…。意識が戻ったとは聞いていましたけど…元気そうで…」

「えぇ、ピンピンしてますよ」

「…ですが、その…ルルシーさんから聞きました。昨日の記憶がないって…」

「そうなんですよ」

不思議ですよねぇ。一体何があったのか…。

全然覚えはないんだけど、ついでに全然危機感もない。

「まさか…『M.T.S社』の所有する新兵器の影響を…」

「さぁ、どうなんでしょう?今のところ、記憶がすっ飛んでいる以外におかしいところはないので…」

…別に根拠がある訳じゃないが。

多分これは、今回の『M.T.S社』襲撃の件とは別件ですよ。

そんな気がする。

だから無害だ。心配する必要はない。

僕はそう思うし、多分ルレイア師匠も、ルリシヤさんも同意見だと思う。

さっきも言った通り、直感以外の根拠が何もないから言えないだけで。

僕は全く心配していない。

そういうことだってありますよ。世界は広いんだから。

「大丈夫ですから、心配しないでください」

「…そうですか…。…あの、ルレイアさんやルルシーさんに比べれば、俺なんて全然頼りないですけど…。俺に出来ることがあれば、何でも言ってください」

それは有り難い申し出だ。

うっかり惚れてしまいそうになっちゃいましたよ。危ない危ない。

「ありがとうございます。もう既に充分ですよ」

「いえ、そんな…」

「昨日、セカイさんを上手く誤魔化してくれたそうで」

「…誤魔化しきれてませんけどね…。むしろ余計な心配を煽ってしまったようで…」

そうだろうか?

無連絡であるよりも、ずっと安心したと思うけど。

「ありがとうございました。これ、お礼じゃないですけど…」

僕は、持参したケーキの紙袋を差し出した。

「え?いや、そんな。俺はルルシーさんの指示に従っただけで…」

「まぁまぁ、そう言わず。美味しいですよ、このケーキ」

「そんな…。当たり前のことをしただけです。お礼なんてもらう訳には…」

「フューニャさんに食べさせてあげてくださいよ。きっと喜びますよ」

「有り難く、頂戴させて頂きます」

チョロい。

でも、受け取ってもらえて何より。

持ってきた甲斐があるというものだ。