「隠していても分かるものです。自分の夫のことですからね」

フューニャは呆れたように言った。

そ、そんな…。

「でも俺、肝心なことは何も伝えないように…」

ちゃんと考えて、言葉を選んで伝えたはずなのだが?

そりゃあ俺の嘘は下手くそだけど、だからって…一瞬で見抜かれるほど下手だったとは…。

「セカイさんは私と違って、占いは出来ませんが…。何かのっぴきならない事情があるんだということくらい、彼女だって察していますよ」

「マジで…?でも、セカイさんは、ルーチェスさんの不在は浮気のせいだって…」

「下手な嘘で取り繕おうとするあなたに気を遣って、誤解した振りをしただけでしょう」

「うぐっ…」

それを言われると…言い返す言葉がない。

俺の嘘が下手なことは、フューニャだってすっかりお見通しだ。

「そうか…」

俺の浅知恵など、彼女には通じないか…。

フューニャがそう言うんだから、きっとそうなんだろう。

セカイさんは、ルーチェスさんが帰ってこられない本当の理由を…何となく察している。

でも、自分が取り乱してはいけないからと、平気な振りを装っているだけ…。

…何とか誤魔化しきれた、と安心していた自分が馬鹿に思えてきた。

上手く誤魔化されたのは、むしろ俺の方じゃないか…。

酷く申し訳なくなってくる。

「後で…お隣に夕飯のお裾分けをしに行ってきましょう」

と、フューニャが言った。

そうだな。アンブローシア家の炊事担当はルーチェスさんだそうだから…。

そのルーチェスさんが戻らないとなると、夕飯に困ってるかもしれないし…。

いや、多分それどころじゃない心情だと思うけど…。

「…セカイさんがどんな様子か、ついでに見てきてくれるか」

「えぇ、そのつもりです」

「くれぐれも、その…本当はルーチェスさんに何があったのかは、知らせないように…」

「分かっていますよ。私、あなたよりは遥かに嘘をつくのが上手ですから」

うぐっ。

分かってはいる。分かってはいるけど…。

口に出してそう言われると、やっぱり落ち込む。

…セカイさん、安心させる為に訪ねていったのに…。

俺のせいで、むしろ心配しているかもしれない…。

そう思うと、やはり申し訳なかった。