その後、俺はフューニャと共に夕食を摂った。

本日のメニューは天ぷらである。

「美味しいですか?ルヴィアさん」

「うん。めちゃくちゃ美味い」

フューニャが作ってくれたご飯で、不味かったものはないよ。

何でも美味しい。最高。

フューニャの料理を食べつけると、よそでは食えない。

「特にこの、ホクホクしたイモ天なんか最高に美味いよ」

「それは良かったです。そのシェルドニアモウドクイモ、お姉ちゃんがシェルドニア王国から取り寄せてくれたんですよ」

思わず、箸を落としてしまうところだった。

え、ちょ、それ大丈夫?

俺、これ食って大丈夫?猛毒…?

フューニャも平然と食べてるし、俺も特に身体に変調はないし。

多分大丈夫だと思うけど、なんかこう…気分的に、味を感じられなくなってきた。

知らない方が良いことというのは、確かにある。

「…と、ところでフューニャ」

俺は毒イモの話題から離れようと、強引に話を変えた。

「はい?」

「さっきの骨占い?って…何を占ってたんだ?」

あの骨で何が分かるのか、是非とも教えてもらいたいものだ。

「あぁ、ルヴィアさんが浮気してないか確かめようと思って」

「ぶはっ」

とうとう堪えきれず、吹き出してしまった。

な、何だって?

「何で…?」

「だって、折角ルヴィアさんが帰ってきたのに…うちに入らず、お隣に直行してたじゃないですか」

…それは…。

「その後、セカイさんとお喋りしてましたから。これはもしかして浮気かと、骨占いで調べていたんです」

俺が帰ってきたとき、「大丈夫そうだ」とか言ってたのはそのせいだったのか。

そんな心配しなくても…俺はフューニャ一筋だというのに。

「誤解だよ、それは…」

「そのようですね」

浮気の誤解が解けたのは良かったけど…。

「って言うか…見てたのか?俺がお隣を訪ねたの…」

「いえ、見てはいません。匂いで分かっただけです」

どうやったら、匂いだけでそこまでの情報が分かるのか。

フューニャの嗅覚は、視覚や聴覚より遥かにたくさんの情報を得られるらしい。

恐ろしい…。

「どうやら、ルーチェスさんのお話をしていたようですね。今夜は帰らないんですって?」

え?

「ど、どうしてそれを…?」

「骨占いで分かりました」

フューニャの嗅覚も恐ろしいが、骨占いの精度も恐ろしい。

何故そんなことまで分かるのか。骨で。

「そうだけど…。でも、セカイさんには黙っておいてやってくれ」

「…」

「彼女は、ルーチェスさんは夜遊びで戻らないだけだと思ってる。そう思わせておいてあげたい。余計な心配をかけたくないんだ…」

ルーチェスさんだって、自分のせいでセカイさんが落ち込んだり、不安になったりすることは望まないはず。

だったら…浮気の誤解でも良いから、せめて元気でいると思っていて欲しい。

…そう、思っていたのだが。

「…全く、殿方というのは…妻を舐め過ぎですね」

フューニャは、バッサリと切り捨てるようにそう言った。

「…え?」

「セカイさんだって、とっくに気づいてますよ。夜遊びで帰ってこないなんて嘘だ、って」

「…!」

俺は驚きのあまり、箸を持つ手が止まってしまった。

気づいてる、だって…?