The previous night of the world revolution7~P.D.~

「…え?寝てんだろ?」

と、尋ねるアリューシャ。

「うん、寝てるんだよ」

「寝ることに理由なんてねーだろ。眠いから寝るんだよ」

そりゃまぁ、そうなんですけど。

凄くシンプルな回答をありがとうございます。

もうそういうことにして良いんじゃないかな。

「あのなぁ。いくらアリューシャだって、狙撃中に眠いからって寝ないだろ?それと同じだ」

ルルシーが口を尖らせて言った。

するとアリューシャは。

「そりゃアリューシャだって…。狙撃中に眠くなったら…。…。…寝ねぇよ!」

ちょっと自信なくしてましたね。

大丈夫。狙撃中のアリューシャは、集中力の塊だから。

まず眠くなるということはないだろう。

「さすがのルーチェスだって、敵のアジトで眠りこけないだろ?普通は…」

「まぁ、ルーチェスもあまり普通ではないけどね」

「何か理由があるはずだ。多分、敵に眠らされたんだろう」

…でしょうね。

それに…ルーチェスの服の胸に開いている、小さい穴も気になる。

これだけ見たら、心臓を貫通してないとおかしいんですよね。

それなのに、ルーチェスは全くの無傷。

この焼けた痕は何だ?

「病院に連れて行くべきよ。病院で調べてもらおう」

シュノさんがそう提案した。

…それしかないですよね。今のところは。

「何かの…危険な毒かもしれないでしょう?眠っているだけのように見えるけど…。目を覚ますまで安心出来ないわ」

「…そうだな」

遅効性の毒を使用された…という可能性も、まだ捨てきれない。

シュノさんの言う通り、目を覚ますまでは安心出来ない。

けど…実は俺は、そんなに心配はしていない。

ルーチェスがそう簡単にくたばるなんて、欠片も思っちゃいない。

ましてや、あんなシケたモブみたいな連中にやられるなんて。

俺の弟子が、そんなにつまらない人間な訳がないだろう?

だから大丈夫だとは思ってるが…。

根拠もないのに大丈夫だなんて言っても、皆余計に不安を煽られるだけだろうし。

敢えて黙っておこうと思う。

「…ルーチェスの嫁には、どう伝える?連絡した方が良いよな…?」

ルルシーが言った。

あぁ…。そういえば。

「絶対心配するよな…。心配するなって言っても…」

ルルシーだってめちゃくちゃ心配してるのに、他人に「心配するな」なんて言っても駄目ですよ。

全く説得力がない。

「そうだね。余計な心配はかけたくない…。不用意に口を割らない方が良いね」

「でも、何も連絡しない訳にはいかないんじゃない?帰ってこなかったら心配するわよ」

連絡なしに帰ってこなかったら、そりゃ心配にもなる。

「そうですね…。せめて、別の女のところにお泊りしてきます、くらいの連絡は入れないと…」

「…それじゃあ、別の心配をするだろ…」

大丈夫ですよ。ルーチェス嫁なら。

「任務が長引いて帰れない、とだけ伝えてもらおう。ルルシー、君のところの準幹部は、ルーチェスの家のご近所だったよね?」

「ん?あぁ」

「じゃあ、彼に伝えてもらおうかな。くれぐれもルーチェスの容態のことは言わないで」

「分かった。ルヴィアにそう指示しておく」

責任重大ですね、ルヴィアさん。

とにかく、これで一応ルーチェス嫁へのフォローも出来た。

あとは…あなたが目を覚ますだけですよ、ルーチェス。