The previous night of the world revolution7~P.D.~

「…!?ルーチェス!?」

先に声を上げたのはルルシーだった。

悲鳴のような声だった。

「ルーチェス、しっかりしろ!大丈夫か!?」

敵の罠が仕掛けられているかもとか、そんなことは全く考えず。

ルルシーは青ざめた様子で、ルーチェスに駆け寄った。

俺はそんなルルシーの代わりに周囲を警戒しながら、同じくルーチェスに駆け寄った。

「起きろ、ルーチェス!しっかり…。…っ!!」

大きな声でルーチェスに呼びかけながら、床に倒れた彼を抱き起こし。

ルルシーはあるものに気づいて、身体を硬直させた。

俺も気がついた。

何に、って?

ルーチェスの左胸…心臓に当たる部分に。

服が焼け焦げて、まるで弾丸で貫かれたように、小指の先程の穴が開いていた。

…この痕は…。

「ルーチェス、お前っ…!」

ルルシーは涙声になって、ルーチェスを強く揺さぶった。

「お前は…こんなところで、簡単にくたばるような奴じゃないだろ…!」

うん。俺もそう思います。

だから。

「ルルシー、ちょっと落ち着いてください」

「お前はどうして落ち着いていられるんだよ?仲間が…ルーチェスが、こんな…。お前の弟子だろ…?」

本当にルーチェスが死…んでいるなら、俺だってこんなに冷静じゃいられませんよ。

今頃鬼神になってると思う。

でも、俺がそうなってないのは…。

「よく見てくださいよ、ルルシー。服は焼けてますけど…血は一滴も出てないでしょう?」

「…え?」

俺に指摘されて初めて、ルルシーは周囲をぐるりと見渡した。

色んな武器やら弾丸やらが、雨あられのように散乱しているけど。

しかし、血の痕は全く無い。硝煙の匂いはするけど、血の匂いもしない。

…ついでに言うと。

「ルルシー。ルーチェス、脈あります」

「えっ」

俺はルーチェスの手首を取って、そう言った。

生きてますよ、普通に。

「外傷は全く見当たりません。脈も全く乱れていません。…恐らく、ただ気を失っているだけです」

「な、何だと…?寝てるだけなのか?」

「そうみたいですね」

パッと見たところ、注射針の痕のようなものも見つけられない。

脈も正常だし、毒物を体内に入れられた…という訳でもなさそうだ。

何で気を失っているのかは知らないが。

今朝からルーチェス、様子がおかしかったから…もしかしたら、そのせいかも。

それとも、あれかな。

ルーチェスに「戻った」かな?

それならそれで良い。

「とにかく、連れて帰りましょう」

「あぁ。…俺が背負っていくよ」

ルルシーは率先して、気を失ったルーチェスをおんぶした。

…しかし、あれだな。

ルーチェスが『青薔薇連合会』に来たばかりの頃のルルシーは…蛇蝎のごとくルーチェスを嫌い、警戒心丸出しだったというのに。

今では、意識を失っただけで涙を滲ませ、率先して背負っていく係に立候補するんだから。

ルルシーって本当シャイですよね。

「行くぞ、ルレイア。急いでルーチェスを医者に見せないと」

「はいはい。行きましょう」

焦るルルシーについて、俺はひとまず『M.T.S社』本部を後にした。