The previous night of the world revolution7~P.D.~

時間稼ぎの為に使われただけなのだ、この女は。

で、たかが時間稼ぎの為に用意した影武者ごときに…重要な情報を与えると思うか?

捕まって、変装がバレれば、俺達から拷問を受けるのは目に見えている。

口を割られて困るようなことは、何も教えられていないはずだ。

上手いこと、何も知らない下っ端をスケープゴートにした訳だ。

全く…。

小賢しい真似をしてくれる。

「本物のリーダーは、今頃幹部を引き連れて脱出しているでしょう」

「…!じゃあ、今からでも追いかけて…」

追いかけて、それで追いつくなら良いんですけどね。

ここまで時間を稼げれば、充分だろう。

俺は、黙って首を横に振った。

もう無理ですよ、ルルシー。

俺達は不覚にも、この影武者女に時間を取られ過ぎた。

本物のリーダーはとっくにトンズラして、秘密の隠れ場なり、同胞のもとに逃げ着いているだろう。

「…ちっ…。みすみす逃がしたってことか…」

「…残念ながら」

口惜しいが…今回は、向こうの方が上手だったようだ。

恐らく、いつ『青薔薇連合会』が奇襲をかけてきても良いように…常に、予め対策を立てていたのだろう。

普段から、「避難訓練」だけはちゃんとしていたってことだな。

しかし…手ぶらという訳ではない。

この建物は抑えた。重要な書類は全部持ち逃げしているだろうが…。

手がかりにはならなくても、残された資料もあるだろうし…。

この詐欺女と、取り残された他の構成員達もいる。

こいつらを徹底的に締め上げれば、何か分かるかもしれない。

…奇襲の戦果としては、非常に切ないが。

逃げられてしまった以上…今の俺達に出来るのは、その程度だ。

この女…。俺から華々しいMVPの座を奪ってくれた礼は、たっぷりさせてもらうからな。

…だが、その前に。

「ルルシー。ルーチェスを援護しに行きましょう」

「あぁ」

上では、まだまばらに戦闘音が聞こえている。

リーダーを取り逃がしたのは仕方ないが、それならルーチェスに合流して、少しでも多くの捕虜を捕まえるとしよう。