The previous night of the world revolution7~P.D.~

…誰だ、この女…。

俺が確認するまでもなく、膝を屈した敵構成員が、その女を見て口々に言った。

「り、リーダー…!」

「リーダー…」

リーダーだと?

「ルレイア…この女が…」

「リーダー…ってことですか」

この女がリーダー…。『M.T.S社』の…。

それにしてはどうも…。

「私が『M.T.S社』の首魁。投降します。部下の命を救ってください」

自称リーダーの女は、俺とルルシーに向かってそう言った。

随分と物分かりの良さそうなリーダーだ。

「よし…。武器を全て捨てろ。部下にも投降させるんだ」

ルルシーは、リーダーに拳銃を向けて指示した。

リーダーは素直に頷き、両手を上げたまま自分の部下に目をやった。

「武器を捨てて、降参するんだ。『青薔薇連合会』には敵わない。命だけでも…」

「…」

「…」

諦めきった声のリーダーの指示に、部下達は次々に武器を捨て、両手を上げた。

いや、リーダーが投降を呼びかけなくても、既に戦意喪失者は続出してたけど。

先程までの激戦は何処へやら、リーダーの指示一つで、あっという間に辺りは静まり返った。

…呆気ないものだ。

もう少し抵抗してくれても良かったのだが…。

…いや。

ともすれば…そう思わせるのが目的、とか?

「そこを動くなよ。全員だ」

ルルシーはそう言って、『M.T.S社』のリーダーに歩み寄り。

彼女の手に、きつく手錠をかけた。

…ルルシーに手錠をかけられるなんて…ちょっと羨ましいんですけど?

いや、むしろ俺は逆が良い。ルルシーに手錠を嵌められても良いけど、それより俺がルルシーに手錠を嵌めたい。

と、いう素敵な妄想に焦がれていると。

「…おい、おいルレイア」

「はい?」

「ボケッとしてないで、この女、早く連れて行くぞ」

「…あぁ、はい」

そうでしたね。

ルルシーと嬉し楽しいSMプレイ…も素敵だけど。

まずはその前に、仕事を済ませなければ。

大人しく手錠を嵌められ、項垂れた様子でルルシーの後ろをついていくリーダー…。

…の、手首を、俺はガッチリと掴んだ。

まさかいきなり捕獲されるとは思ってなかったのか、『M.T.S社』のリーダーはビクッと身体を震わせた。

…駄目ですよ。

そのくらいで怯えてちゃ。

「演技」…もっと上手くやらないと。

「ルレイア…?どうした?」

不審な行動をする俺に、怪訝そうな顔を向けるルルシー。

ルルシーは純粋で、心がピュアだから気づかなかったんだろう。

一方の俺は…いや、俺もピュアだけど…。

しかし俺は心が美し過ぎて、腹黒いことを考えている奴が分かるのだ。

結局俺もルルシーも、二人共ピュアってことで。

俺達の心が河だったら、きっとホタルとオオサンショウウオが住んでるに違いないですね。

いやぁ美しい。

…で、それはさておき。

俺の心はそれだけ美しいから、薄汚い浅知恵を巡らせて他人を騙そうとする…。

…あなたみたいな人間の考えは、お見通しなんですよね。

俺はリーダーを騙る女の腹に、思いっきり拳をめり込んだ。

ちょっと内臓が潰れたみたいな音がしたけど、多分平気。