…。

…一時間後。

本当に、時既に遅し、だった。

「…お前らと来たら…。手加減をしろよ」

誰が敵を全滅させろと言った?

ルレイアとルーチェスの二人が、ほぼ全ての敵を一刀両断してしまっていた。

更に、俺とルリシヤを迎えに来ていたのは、ルレイア達だけではなかった。

「見たか!アリューシャの超絶華麗な狙撃!」

スナイパーライフル片手に、ドヤ顔でピースサインをするアリューシャである。

アリューシャまで来ていたのか…。

そりゃ敵が全滅するのも当然だ。

ルレイアにルーチェス、更にアリューシャまで目を光らせていたなんて。

ルレイアとルーチェスの殲滅力に加えて、アリューシャのライフルにまで狙われたとあれば。

最早、死神であっても逃げることは出来まい。

「アイズ…。今度からは、もう少し平和的な人選を頼む」

強いけど、頭の中空っぽな奴らばっかじゃん。救出メンバー。

お前という司令塔がついていながら。

「大丈夫だよ、これも想定済みだから」

あっけらかんとして、アイズはそう言った。

そういう事態を想定しないでくれよ。

しかし、アイズは俺より一枚上手だった。

「それに、敵は全滅していないよ」

「え?」

「ね、シュノ」

アイズはシュノに向かって、同意を求めた。

するとシュノは、こくりと頷いた。

「混乱に乗じて、こっそり逃げようとしていた『霧塵会』のリーダーと、その親衛隊数人を捕らえたわ」

えっ。

「『青薔薇連合会』に移送して、後で尋問しましょう」

「シュノ…お前…」

…お前がいてくれて良かったよ。

頭脳筋な奴ばっかりで、話通じないと思ってたら…。

そうか。全滅した訳じゃないんだな。

おまけに、リーダーまで捕らえていたとは。

それはお手柄だ。

じゃあ、奴らをたっぷりと尋問して…『霧塵会』の隠し事を全て、明らかにするとしよう。

「食堂に隠されてた資料は、もう押収したのか?」

「勿論、見つけたよ。後で精査しないといけないからね、大事に保管してある」

「そうか」

俺達が食堂の冷蔵庫で見つけた資料も、既に欧州済み。

ならあとは、その資料と照らし合わせながら尋問を…。

…しかし。

「ルレイアさん。アイズさん。良くない知らせです」

その場に、準幹部の華弦がやって来た。

華弦も来てたのか。どうやら後方支援だったようだが。

大勢の仲間に助けに来てもらって、頭が上がらない。

「良くない知らせ?」

「はい。捕らえた捕虜が全員…自害しました」

「…!」

俺達は一同、驚いて顔を見合わせた。