The previous night of the world revolution7~P.D.~

「お、オルタンス殿…。御冗談を…」

「お前はルレイアと背格好も似ているし、女装…ならぬルレイア装をしたら、意外に似合うと思うんだが」

「全く嬉しくないですね…」

こんなに嬉しくない褒め言葉も、なかなかないだろうな。

「そうか…。なら、やはり等身大ルレイアの人形を、」

会議そっちのけで、下らない我儘に付き合わされていた…丁度そのとき。

会議室の扉がノックされた。

「あ?」

誰だ。一応会議中だぞ。

いや、会議とは言えない、下らない話しかしてなかったけども。

部屋の扉を開けて、困惑した表情の帝国騎士が入ってきた。

「会議中のところ、申し訳ありません…」

別に良いぞ。

どうせ、下らない話しかしてなかったからな。

まぁ、下らない会議というのは、むしろ平和の象徴である。

難しい顔を突き合わせて、頭が痛くなるような深刻な話し合いをしなくて済む。

それだけ平和だってことだ。

ちょっと前まで…『帝国の光』とやらの一件のときは、本当、毎回難しい顔してたからな。

いや、オルタンスは通常運転だったけど。

オルタンスが人並みに狼狽える姿を、一度で良いから見てみたいものである。

…でも、このオルタンスが人並みに狼狽えるようなことがあったら、それは恐らくルティス帝国存亡の危機だろうから。

やっぱり、オルタンスが狼狽える様なんて、見ない方が良い。

…さて、それはともかく。

「どうした?何があった」

「は、はい…それが、その…。先程この王宮に、侵入者が…」

…侵入者だと?

その言葉を聞くなり、オルタンスの顔が輝いた。

「ルレイアが遊びに来てくれたのか?」

…言うと思ったよ。

「あ、いや、その…」

「よし、丁度良い。海に誘おう」

そう言ってオルタンスは、懐に忍ばせていた、空気を入れる前のぺちゃんこの浮き輪を取り出した。

何でそんなものを持ち歩いてるんだ。

つーか、帝国騎士団団長を名乗るなら、浮き輪くらい無しで泳げよ。

「ちょっと待ってくれ。今膨らませるから。準備が出来たら海に行こう」

オルタンスは空気の入れ口に口をつけて、ふーふー空気を送り込んでいた。

エアーポンプを使え。口で入れる奴があるか。

もう、オルタンスのせいでツッコミどころが満載だが。

報告に来てくれた帝国騎士は、相変わらずの困惑顔だった。

そりゃそうなる。

…で、侵入者だったな?

悔しいが…恐らく、オルタンスが期待している人物だろう。

そうでなきゃ、警備を掻い潜って、この建物に乗り込むなんて不可能だ。

ルレイアでなかったとしても…ルレイアの「同僚」だろうな。

やれやれ、以前もこんなことがあったな。

奴らが血気に逸って乗り込んでくるなんて、絶対ろくなことじゃないに決まってる。

折角平和な日常が戻ってきたというのに、どうしてこう…平和が長続きしないのか。

…しかし。

「…あの…侵入者は、『青薔薇連合会』ではありません」

「…え?」

報告係にそう言われて、俺は思わず言葉を失った。