「デートですか」

「はい。ルレイア師匠がいないから、ルルシーさんも魔が差したんだと思います」

それは仕方ない。そういうこともある。

俺は寛容の塊みたいな人間ですからね。一度や二度の浮気くらい、広い心で許しますよ。

…でも、許す前に。

「再度、俺色に染めてあげないといけませんね。そして俺のルルシー欠乏症も治、」

と、言いかけたそのとき。

「待て待て、そう走るなルルシー先輩」

外から、聞き覚えのある声がした。

この声は…。

そして、ドタドタと走ってくる音が聞こえたかと思うと。

「ルレイア!!」

エントランスに、息を切らしたルルシーが飛び込んできた。

大きな声で、俺の名前を呼びながら。

血相を変えたその顔を見て、俺はルルシーがどれだけ自分を心配してくれていたか知った。

…全くもう、あなたという人は。

「…ただいま、ルルシー」

俺は笑顔でルルシーに手を振った。
 
俺としては、陽気に再会を祝いたかったのだが…。

ルルシーの方は、そうは行かなかった。

「ルレイア…。お前…」

俺の顔をじっと見つめ、まるで確かめるように一歩、二歩とルルシーは俺に近づき。

そして、ガバっと俺を抱き締めた。

いやん。大胆。

「無事だったんだな…。良かった…本当に…」

「ルルシーったら…。俺を誰だと思ってるんですか?無事に決まってるでしょう?」

「うるせぇ…。俺を心配させるな」

全くですね。

「済みません。心配かけましたね」

「あぁ、めちゃくちゃ心配した」

「それと…迷惑もたくさんかけましたね」

「迷惑はかかってない。心配だけだ」

そうですか。

それは大変申し訳無いことをしました。

でも、こうしてちゃんと、無事に帰ってきたのだから。
 
それで良し、ということにして欲しい。
 
「戻ってきたか、ルレイア先輩。元気そうで何よりだ」

ルルシー遅れてやって来たルリシヤが、俺を見てそう言った。

「えぇ、元気ですよ。長いこと留守にして済みません」

「大丈夫だ。今に帰ってきてくれると信じていたからな」

それは良かった。

まぁ、ルルシーの心配性が重症過ぎるだけなんですけど。

案の定、ルルシーは。

「お前が帰ってこないんじゃないかって…俺はずっと…」

そんな心配してたんですか?ルルシーったら。

「帰ってくるに決まってるじゃないですか…。俺の居場所はいつだって、あなたの隣ですよ」

帝国騎士団でも、帝国自警団でもない。

『青薔薇連合会』の幹部という称号でさえ、俺にとっては大した意味を持たない。

ルルシーの隣。それこそ、俺の居るべき場所だ。

それ以外の場所で、俺が安息を得ることはない。

「…そうだな、良かった。帰ってきてくれて…」

「えぇ、ただいま。ルルシー」

「…お帰り、ルレイア」

と、いう俺とルルシーの感動的な再会シーンを、ルーチェスはきらきらした目で見つめて一言。

「…ご飯が進む…!」

「…お前、本当ぶっ飛ばすぞ」

ぶちギレたルルシーの一言に、皆が微笑みを溢した。