…しかし、一方のアリューシャは。

「へ?へ?…る…ルレ公?」

きょとんとした顔で、俺を見つめていた。

まだ状況が理解出来ていないらしい。

良いですよ。時間をかけて、ゆっくり理解してください。

「こんにちは、アリューシャ。ルレイアが帰ってきましたよ」

「ま…。…それマ!?」

「えぇ。マです」

冗談でも夢でもありませんよ。本物です。

「うぉぉぉぉ!帰ってきやがったか〜!どの面下げて帰ってきやがった!」

「この面下げて帰ってきました」

「そうか!なら仕方ねぇな!おけぇり!」

ただいま。

感動の再会が続いていて、何だか嬉しいですね。

やっぱり自分の居場所はここだなぁ、と感じる。

こんな居心地の良い場所を捨てて、帝国自警団に入れなど。

ブロテは何を血迷ったことを言ってたんだろうな。

「ほらほら、シュノさん。もう泣かないでくださいよ」

「うぅ、ふぇ…。だって…だって…」

「俺は大丈夫ですから。帰ってきましたから。ね、もう泣かないで」
 
「ふぇ…。ふぇぇぇ…」

あぁ、駄目そう。

優しくすればするほどに、涙が出てしまうようだ。

仕方ない。もう少し、好きなように泣かせてあげよう。

「ったくおめーと来たら、まーたシュー公泣かせやがって!」

「シュノを泣かせられるのは、ルレイアくらいだもんね」

それを見たアリューシャが口を尖らせ、アイズがフォローを入れたが。

二人共口元が緩んでいるので、微笑ましいと思ってるんだろう。

いやぁ仲間って良いもんだなぁ。

と、思っていたそのとき。

別の仲間が、その場にやって来た。

「ルレイア師匠、お帰りなさい」

「お、ルーチェスじゃないですか」

俺の弟子であり、つい先日までブロテの勘違いの種であった元ベルガモット王家の皇太子、ルーチェスがやって来た。

「何だか騒がしいから、これはルレイア師匠の華々しい凱旋かと思いまして、迎えに来ました」

成程。さすがルーチェス、分かってる。

「手荒く扱われることはないと思ってましたが…お元気そうで何よりです」

「ルーチェスこそ。変わりないですか?」

「えぇ、それはもう。むしろルレイア師匠が不在の間に、第二のルレイアとしてここぞとばかりに名を上げていたところです」
 
ほほう。それはそれは。 

さすがは俺の弟子。抜け目がない。

俺の自慢の弟子ですからね。
 
「帰ってきて早々、シュノ姐さんを大号泣させるとは…。さすがルレイア師匠ですね」

「でしょう?もっと褒めてくれても良いんですよ」

「はい。僕も見習います」

ここにルルシーがいたら、間違いなくツッコミが入っていただろうが。

残念ながら、ルルシーは今いない。

「ルーチェス。ルルシーは今いないんですよね?それから…ルリシヤの姿も見えないようですが」

彼らの顔も見なければ、まだ『青薔薇連合会』に帰ってきた実感が沸かない。

しかし。

「残念ですね、ルレイア師匠…。ルルシーさんとルリシヤさんは、今二人でデート中です」

「…ほう…?」

それはまた…聞き捨てならないことを聞いたな。