The previous night of the world revolution7~P.D.~

「マリアーネ…」

「…ごめん、ブロテちゃん。私が無力だったせいで…」

泣きそうな顔で、マリアーネは私に頭を下げた。

まさか。

「やめて、マリアーネ。あなたが謝る必要はない」

「こうなる前に、自警団は何かをすべきだった…。でも私は手をこまねいて…。そのせいで多くの団員が、自警団に失望して出ていってしまったの」

「だから、それはあなたのせいじゃないでしょ。マリアーネ」

「でも…私はブロテちゃんに団長代理を頼まれたのに…」

違う。そういう意味で、私はマリアーネに団長代理を託した訳じゃない。

責任を背負うべきは、団長である私だ。

「…マリアーネに責任があるって言うなら、僕達もそうだ」

セルニアが言った。

「僕達だって、ただ状況を静観していただけだった。帝国騎士団が『青薔薇連合会』と癒着して、どんどん腐敗していく様を見ていたのに…」

「…そうね。これは自警団の皆の責任だわ。マリアーネだけじゃない」

「ブロテに託された自警団を、守るどころか衰退させてしまった。帝国騎士団はもう、自警団の存在そのものも覚えていない」

私は、それ以上聞いていることが出来なかった。

「…やめて、皆のせいじゃない」

ここにいる誰も悪くはない。皆に責任はない。

…自警団がこんな状況だったことも知らず、呑気に海外留学していた私の責任だ。

「よく話してくれたね。ありがとう…。今自警団がどういう状況なのか、分かったよ」

これから私がどうするべきか、自警団をどうしていくべきなのかも分かった。

「ブロテちゃん…」

「大丈夫よ。これから挽回していくから。私が戻ってきたからには、もう好き勝手させない」

『青薔薇連合会』なんてマフィアに、これ以上好き勝手させない。

自警団が毅然とした態度を取れば、団員達の信頼も取り戻せるはずだ。

「あ、そ…そう、でもねブロテちゃん。今日は珍しく…新しい団員が増えたんだよ」

何とか明るい話題を提供しようと、マリアーネが努めて笑顔で言った。

へぇ、それは良いことだ。

ほら、あながち自警団も、まだ捨てたものじゃないってことだ。

自警団に希望を持って、入団してくれる人がいるとは。

じゃ、その人達の期待を裏切らないようにしないとね。

「それに、一人じゃないんだ。二人も増えたんだよ。その人達と会ってたから、歓迎会に遅れちゃって…」

と、マリアーネが教えてくれた。

成程、そうだったんだ。

「それなら大丈夫。私がルティス帝国に戻ってきたからには、『青薔薇連合会』の暴挙も、帝国騎士団の腐敗も許さない。私に任せて」

必ず、このルティス帝国を正しく導いてみせる。

帝国自警団の団長、ブロテ・ルリシアスの名にかけて。