The previous night of the world revolution7~P.D.~

俺の頭の中は、驚くほど静かで冷静だった。

「彼を説得するには、君から話してもらうのが一番だって聞いた。君の言葉なら耳を貸すと…。だから協力して欲しいんだ。ルレイア卿が表の世界に戻れるように…」

「…もう良い。それ以上喋るな」

あまりに下らない戯言だ。

アリューシャの頭の弱いお喋りに付き合う方が、まだ生産性がある。

なんて言ったら、アリューシャに失礼だ。

「…分かってもらえた?」

「あぁ、分かったさ。…お前が幸せなお嬢様だってことがな」

この女は何も分かっていない。

分かるはずがない。裏の世界に生きている者の気持ちを。

生まれたときから表の世界で平穏に生きてきた奴に、何が分かるというのだ。俺達の抱える闇を。

「…どういう意味?」

「お前が思ってる以上に、この世界は、運命ってものは、残酷だってことだよ」

世の中が捨てたものじゃないだと?

自分の意志で、簡単に表の世界に戻れるとでも?

じゃあ何だ。裏の世界にいる俺達は、望めばいつでも表の世界に戻れるのに、俺達の我儘で裏の世界に居続けてるだけだと?

望みさえすれば、いつでも表の世界に戻れると。本気でそう思ってるのか?

…馬鹿にするなよ。

「良いか。お前にとって、世界ってのは優しかったのかもしれない。だから誤解してるのかもしれないが…世界はそんなに甘くない」

『青薔薇連合会』に所属している者は、大概がそうだ。

皆、やむにやまれぬ事情があった。

本当は真っ当に、明るい世界で生きていたいのに…そう出来ない理由があった。

今だってそうだ。戻れるものなら戻りたいけど、表の世界のあまりの眩しさに足が竦み、戻れない者が大勢いる。

それ故、暗闇の中に安息を求め、光の眩しさに傷つくくらいならと、こちら側に居続けるのだ。

俺だって…多分、そうだ。