The previous night of the world revolution7~P.D.~

…だろうな。

俺でさえ思いつくことを、アイズが分からないはずがない。

…しかし。

「でも、そうなる可能性は限りなく低いよ。ルレイアが何か犯罪行為を行ったという証拠は、何も掴めていないはずだから」

「…」

「今回の『保護』も、帝国自警団としてはかなり無理矢理敢行してるはずだよ。これ以上理屈をつけて拘束を続けるのは、無理があるんじゃないかな」

…とのこと。

アイズなりに、状況を分析しているらしい。

呑気にアリューシャの口を拭いている余裕があるのは、それが理由か。

だけど俺にとっては、そんな希望的観測で落ち着くことは出来ない。

だって、限りなく低いってだけで、可能性はゼロじゃないんだろう?

例え0.1%でも可能性があるなら、安心は出来ない。

今、拘束されているルレイアが…どんな目に遭っているのかも分からないのに。

すると、俺の心配を見透かしたかのように、ルーチェスが言った。

「大丈夫ですよ、ルルシーさん。逮捕された訳じゃないんですから、丁重に扱われているはずですよ」

「…そんなの分からないだろう?」

鉄格子の嵌められた狭い監獄に押し込められ、常に複数人の監視に見張られている状況かもしれない。

それどころか、虐待を受けている可能性だってあるのだ。

よってたかって監視人に囲まれ、暴行を受けているルレイアの姿を想像して。

俺は、思わず叫び出したい衝動に駆られた。

駄目だ。想像しただけで気が狂う。

「相変わらずルルシー先輩は、ルレイア先輩に関することになると正気を失うな」

『ホワイト・ドリーム号』の一件のときを思い出したのか、ルリシヤがそう言った。

…あの頃も、俺は相当荒れていたな。

あのときとは違って、今度はルティス帝国国内のことだから、その点では多少なりとも安心だが…。

訳の分からん組織にルレイアが連れ去られてしまった、という点では、あのときと同じだ。

帝国自警団なんて、俺にとっては訳の分からん組織以外の何物でもない。

「心配要らないさ、ルレイア先輩」

「…何がだよ?」

「もし『保護』の期間が一ヶ月を超えて延長されるようなら、また白馬の王子になって、ルレイア先輩を迎えに行こう」

…懐かしいな。

そんなこともしたっけ…。

「そのときは、またウィッグをつけて、メイド服を着ることを忘れるな。それと、胸パッドも忘れずにな」

「…そんなことまで思い出させるなよ…」

記憶の彼方に消していたつもりなんだが?

すると、耳聡いルーチェスが目を光らせた。

「メイド服…胸パッド…!?それは是非とも、詳しいお話を聞かせて頂きたいですね」

…この下衆め。

「勿論だ、ルーチェス後輩。あのときの写真と動画もある。一緒に振り返るとしよう」

「ありがとうございます!」

…はぁ。

こいつらを見ていると…思い悩んでいる自分がアホらしく感じてくる。

…俺だって分かってるよ。

俺があまりに気に病んでいるものだから、こいつらなりに気を遣って、こんな明るい態度を取ってくれてるんだってことくらい。

その気遣いが分かるから、俺はルリシヤ達のことを本気で怒れなかった。

…本当弱いな、俺は。

だけどルレイア。俺はお前が心配なんだ。

誰に何と言われて宥められようとも。

自分の相棒が連れ去られて、今どうしているのかも分からなくて…。

そんな状況で、正気を保っていられるはずがないだろう?