――――――…その頃、帝国自警団では。

「…むっ!」

俺のもとに、ビビッ、と何かが届いた。

今…今、ルルシーから愛の言葉を囁かれた気がする。

俺もあなたのこと、ずっと思ってますよ。ルルシー。

「?どうした?」

「…いえ」

嬉しいのだけど、素直に喜べる状況じゃないんですよね。

手錠こそ嵌められていないものの。

俺の左右に、ぴったりと帝国自警団の団員がくっついている。

これでも一応、連行の名目は「保護」なんですよね。

これの何が保護なのか…。拉致じゃないですか。ねぇ?

「で?俺はここで何をすれば良いんですか?」

捕虜でも容疑者でもないんだから、尋問に応じるつもりはないぞ。

とはいえ、あまり反抗的な態度を取ると、逮捕令状出されかねないしな。

よし。ここは俺の紳士的振る舞いを持って応じよう。

…と、思ったのだが。

「貴殿の処遇は、ブロテ団長が決めます」

左にいた男性団員は、静かにそう言った。

ほう…?

あの乳臭い小娘が?それは楽しみだ。

一体何が飛び出してくるやら。わくわくしますね。

「用事を済ませてから、貴殿のもとに来るそうです。それまでは、部屋を用意してあるので、そこでお過ごしください」

「ふーん…」

その部屋って、鉄格子とかついてませんよね?

まぁ、鉄格子がついていたところで、別に構わないけど…。

しかし、その心配は無用だった。

「ここです」

俺の為に用意したという部屋は、鉄格子で囲われてはいなかった。

扉に鍵はかかっているけど、窓もあったし、カーペットは敷いてあるし、ベッドもテレビも置いてあった。

何なら、紅茶のティーバッグとポットも置いてあった。

ちょっとしたホテルみたいな部屋だ。

「ここでお待ち下さい。必要なものがあれば申し付けて下さい」

「そうですか」

意外と悪くない待遇だ。

…しかし。

「それから、申し訳ないのですが…スマートフォン他、外部と通じる通信機器は全て預からせてもらいます」

…ですよねー。

そこは囚人と同じだ。

まぁ、外部に…ルルシー達と連絡を取り合われたんじゃ、「保護」してる意味がないもんな。

隠し持っていても良いのだが…。

いずれにしても、間違いなく監視カメラがついているであろうこの部屋で、ルルシー達と連絡を取ることは出来なかった。

下手なリスクは犯さない方が良いだろう。今は。

ほら、俺さっき、紳士的振る舞いをするって誓いましたし。

いつも紳士ですけどね、俺は。

「分かりました。ちゃんと後で返してくださいね」

「勿論です。預かるだけですから、必ずお返しします」

…それは良いんだけど。

「スマホの中身とか、検閲するんですか?」

黙ってやられるのが嫌だったから、こちらから聞いてやった。

俺のスマホを没収した団員は、驚いたようにこちらを見た。

「いえ、そのような指示は出ていません。これは預からせて頂くだけなので、中身を検めるようなことは…」

「あー、はいはい。ふーん」

まぁ、そういうことにしておきますよ。

別に中身を見られたところで、ルルシーとのイチャイチャメールを見られるだけだ。

痛手でも何でもない。好きにしてくれれば良い。

さて、それじゃ。

俺は大人しく、囚人生活をエンジョイするとしましょうか。