…時は、少し遡る。

ブロテが『青薔薇連合会』にやって来る直前。

俺はいつも通り、ルルシーの執務室で午後を過ごしている最中だった。

「見てください、ルルシー」

スマートフォンの画面を、ルルシーに見せた。

「バズってますよ。予想通り、アホな蝿共が釣れました」

「分かったよ…。もう何度も見せられたよ」

何回でも見て欲しいんですよ。

だって、あまりにも大衆が馬鹿ばっかりで。

俺が企画した「ブラック・カフェ」…店名は『Schwarz Stern』にしたのだが。

無事にオープンして、はや二週間ほど。

ルルシーは眉をひそめていたこのカフェだが、いざ開店してみると。

俺の予定通り、ルティス帝国のアホなSNS蝿共に大好評。

当然SNSではめちゃくちゃ話題になっており、お店は連日大行列で、オーナーとしてはほくほくである。

素晴らしい。

「やっぱり、皆さん黒が好きなんですね。当然ですよね、良い色ですからね〜」

「…ルティス帝国民が段々ルレイア趣味に染まっていって、俺は危機感しか感じてないよ」

え?ルルシー今何て?

きっと褒め言葉ですね、そうに違いない。

「浮かれるのは結構だが、今これほど繁盛してるのは、初動で上手く流行に乗っかったからだぞ」

と、ルルシーは釘を刺した。

「流行ってのはいつか廃れる。一通り話題になって、飽きたら、きっと客も減るぞ」

「勿論、分かってますよ」

今でこそ、若者達の話題の的になっているが。

蝿共は、いつだって熱しやすく冷めやすいからな。

一通り騒ぎ倒して、飽きたら、すぐに別の話題に移ってしまう。

全く。いつだってルルシー一筋の一途な俺を、少しは見習って欲しいものだな。

「要するに、元が取れたらそれで良いんですよ。いっときバズって儲けて、利益を回収出来ればそれで良いんです」

その後は閑古鳥で、そのまま一年足らずで潰れたとしても良し。

ちょっと流行れば良いんですよ。これ以上利益にならないと思ったら、さっさと撤退します。

世の中そういうものだ。

蝿共の考えることだからな。アホみたいに、苦しい経営戦略なんて考えない。

流行るときに流行るものを提供して、流行らなくなったら、さっさと見切りをつける。

それが終わったら、また次の流行に乗っかりますよ。俺も。