――――――…箱庭帝国から帰ってきた、その翌週。

幸い、俺達が留守の間、帝国自警団も大人しくしていたようで。

『青薔薇連合会』は、特に動きもなく平穏そのもの。

このままずっと、大人しくしてくれれば良いんだけどな。

大人しければ大人しいほど、何か良からぬことを企んでいるんじゃないかと心配になる。

…って、こんなことばっか心配してるから、ルレイアにしょっちゅう「心配性」って言われるんだろうな。

違うんだよ。ルレイア達があまりに楽観的だから、俺が代わりに心配してるんだ。

皆が能天気だったら、いざってとき困るだろ。

ただでさえ、ルレイアやルリシヤ…それにアイズもああ見えて、結構成り行き任せなタイプだからな。

その分、俺がしっかりしてないと…。

特に帝国自警団は、妙にルレイアを警戒していたからな。

ルレイアの相棒として、帝国自警団から目を逸らさず…。

…と、思っていると。

俺の執務室の扉が、今日も元気に開けられた。

「へーい、大将!やってる?」

「…」

…俺の執務室はラーメン屋かよ。

アリューシャとアイズが、ラーメン屋感覚でご来店。

やってねーから帰れ。

更に。

「ルレイア、来たよ」

シュノまで一緒にご来店。

言っとくけどな、シュノ。ここ俺の部屋だからな。ルレイアを求めて来たなら間違ってるぞ。

それとも、ここに来ればルレイアがいるだろうって?畜生。

しかし、今日は本当にルレイアはいないぞ。

…まだ、だけどな。

「ん?ルレイア先輩はまだか」

「準備に時間かかってるのかもしれませんね」

ルリシヤとルーチェスまでもが、いつの間にか部屋の中に生えていた。

お前らは、どっから入ってきたんだ。

まぁ、この間みたいに自宅に侵入されるよりはマシだが。

…それにしても、今ルーチェスは気になることを言わなかったか?

準備…?

準備って、何の準備だ?

…もしかして、またろくでもないことを企んでいるのでは?

長年の勘で、そう感じる。

すると、案の定アリューシャが口を尖らせた。

「何だよ。ルレ公がこの時間に来いって言うから来たのにー」

何だと?

ルレイアが言ったのか。今日この日、この時間に幹部組は俺の執務室に集合しろ、と?

部屋主の許可もなく?

「美味いもん食わしてくれるって言うから、おやつ我慢して楽しみにしてたんだぜ?」

「そうだね、おやつ我慢出来て偉かったねーアリューシャ」

「だろ!?」

馬鹿親子共め。

そんなことはどうでも良い。美味いもの食わせるって、ルレイアがか?俺の部屋で?

別に勝手にすれば良いけど、俺の部屋でやるのはやめろよ。

何故自分の部屋でやらないのか。

「シュノ…これはどういうことなんだ?」

と、俺はシュノに尋ねてみた。

このメンバーの中だと、一番まともに話が出来そうだから。

すると。

「ルレイアがお店を開いてくれるの」

シュノは、嬉しそうにそう言った。

…は?