「ルレイアだけじゃなくて、『青薔薇連合会』の主力が全員、国を留守にしてるみたいなの」

と、マリアーネは追加情報を教えてくれた。

幹部組が全員いないってこと?

『青薔薇連合会』の主力が、同時に全員国外に出るなんて…。

やっぱり、何か企んでいるに違いない。

そして、十中八九…その企みを企てたのは、ルレイア・ティシェリーのはずだ。

「何を考えてるんだろう、彼らは…」

「…分からない…けど、行き先の目処はついてる」

「行き先?何処?」

以前大使が来ていた…シェルドニア王国だろうか?

それとも、『青薔薇連合会』の支部が多数存在する、アシスファルト帝国…?

しかし、私の予想は裏切られた。

「箱庭帝国だって」

…それは意外だった。

いや、でも。

「箱庭帝国…。…確か、革命のときに『青薔薇連合会』が力を貸したって噂が…」

「うん…。表向きは帝国騎士団が手を貸したことになってるけど、裏で『青薔薇連合会』が手を引いてたんじゃないかって噂がある」

「それどころか、革命を首謀したのは『青薔薇連合会』じゃないかって噂もあるね」

と、傍で聞いていたセルニアが言った。

…少し前だったら、そんな話を聞いても眉唾だと思ってただろうね。

でも、今はもう驚かないよ。

充分有り得る話だ。

あのルレイア・ティシェリーなら…そのくらいのこと、簡単にやってみせるだろう。

だって、シェルドニア王国の王室だって好き勝手しているのだ。

シェルドニア王国よりずっと小さな国である箱庭帝国など、ルレイアにとっては赤子の手を捻るも同然。

革命を組織して憲兵局を倒し、箱庭帝国の人々に恩を売り。

厚かましくも、その恩を返させる為に、箱庭帝国を言いなりにしているのだ。

箱庭帝国の人々にとっては、憲兵局の支配時代と変わりなかろう。

従う相手が、憲兵局からルレイア・ティシェリーに変わっただけなのだから。

それもこれも、ルレイアが他の国で自分の権威を振るう為…。

「その証拠に…革命の後、箱庭帝国にも『青薔薇連合会』の支部が建てられている」

「…そうだね」

誰だって、自分の国に他国のマフィアが入り込んでくることを望む者はいない。

それなのに、箱庭帝国は『青薔薇連合会』の介入を許している。

それはひとえに、箱庭帝国の人々がルレイア・ティシェリーに脅されたからだ。

ルレイアは、箱庭帝国を救う為に革命に手を貸したのではない。

恩を売ることで、『青薔薇連合会』が箱庭帝国で好き勝手出来る権利を得たかっただけ。

その証拠に、革命が成功し、箱庭帝国の体制が安定するなり。

無理矢理箱庭帝国に入り込み、『青薔薇連合会』の支部を立て、自分の部下に箱庭帝国の代表を見張らせている。

…何処まで卑劣なのだ、あの男は。

帝国自警団に目をつけられていると分かっていて、他の幹部を引き連れて箱庭帝国に出掛けたのも。

絶対に自分は大丈夫だという、傲慢な確信があるからだ。

私達帝国自警団が何をしようと、自分の盤石な権威に傷をつけられることはないと、たかを括っている。

…舐められたものだ。

でも、今に見ているが良い。

箱庭帝国で、シェルドニア王国で、そしてこのルティス帝国で。

これ以上、好き勝手なことはさせない。

ルレイアがルティス帝国を留守にしている、今だからこそ。

彼の目が届かない今だからこそ、私達も自由に動くことが出来る。 

「…皆、聞いて。ずっと考えていたことがあるんだ。一緒に調べてくれる?」

「…何を?ブロテちゃん…」

…それは。

ルレイア・ティシェリーを止める為に、必要なことだよ。