その表情を見ただけで、愉快な話ではないことは明白だった。

そして、案の定。

「たった今、報告が入った。『青薔薇連合会』の複数の口座に、同時に多額の金が振り込まれたらしい」

何だって…?

「それは…もしかして…」

「送金したのは海外の口座で…。調べてみたら、シェルドニア王国からの送金だった」

「…!」

シェルドニア王国から、『青薔薇連合会』の口座に入金があった。

…最早、どのような言い訳も通じない。

事実なのだ。

本当に『青薔薇連合会』は、ルレイア・ティシェリーは…シェルドニア王国からお金を巻き上げているのだ。

先日、『青薔薇連合会』にシェルドニア王国の大使が来ていたのも。

その後続けざまに、シェルドニア王国から『青薔薇連合会』宛に手紙が届いていたのも。

全ては、そのお金の為…。

「詳しい金額までは分からないけど、相当の金額だそうだ」

「…そうだろうね」

強請れば強請るだけ、お金を払ってくれるんだもんね。

いくらでも要求するよね。恥知らずなあの男は。

ルティス帝国国内のみならず、シェルドニア王国までその毒牙が…。

「…許せない」

何が何でも、早急に、ルレイア・ティシェリーを止めなくては。

これ以上奴の暴挙を許したら、今度は誰が被害に遭うか…。




…と、思った矢先。

「ブロテ、大変よ!」

先程のアンブロと同じように。

今度はシャニーが、慌てて部屋に駆け込んできた。

「どうしたの、シャニー?」

「『青薔薇連合会』が…」

…また、『青薔薇連合会』。

シェルドニア王国からお金を巻き上げて、それで次は何をするつもりなんだ。

少しは大人しくしていられないのか、あの男…!

「ルレイア・ティシェリーとその側近が、ルティス帝国を出たそうよ」

シャニーの報告に、私は目を点にした。

「え…?何処に…行ったの?」

「箱庭帝国行きの飛行機に乗り込んだ、って…」

「…!」

…シェルドニア王国だけでは満足出来ない、とでも言うつもりか。

ルレイア・ティシェリーは、私が止める暇もなく。

今度は、箱庭帝国にその悪手を伸ばしていた。