『青薔薇連合会』。

そして、『青薔薇連合会』を実質的なリーダー、ルレイア・ティシェリー。

あの男のやることだ。大体想像はつく。

「シェルドニアの人達は、争いを好まない、穏やかな国民性だって聞いたよ」

「うん。そう言われてるね」

「そんな人々が、自ら『青薔薇連合会』に…他国の非合法組織と関わりを持つとは考えられない」

シェルドニア王国側から、声をかけた訳じゃないだろう。

先にコンタクトを取ったのは、『青薔薇連合会』に違いない。

あのルレイア・ティシェリーが、更なる資源と資金を求めて、シェルドニア王国に目をつけたのだ。

シェルドニア王国は、ルティス帝国と負けず劣らずの大国。

従えることが出来れば、有力な「資金源」になるに違いないと。

そして、シェルドニア王国の人々を一方的に脅しつけたのだ。

突然の「奇襲」をかけられたシェルドニア王国は、ルレイアに舌先三寸で丸め込まれ。

このような争い事に慣れないシェルドニア王国側は、不躾なルレイアの要求を、毅然として断ることも出来ず。

あれよあれよと流されて、主従関係を結ぶ羽目になったのだ。

…なんて卑劣な。

抵抗の出来ない相手に、無理矢理カツアゲするようなものだ。

「ルレイア・ティシェリーが脅したんだ。シェルドニア王国の女王様を…」

「…」

「許せない。何の罪もないシェルドニア王国の人々から、お金を巻き上げるなんて…!」

何処まで卑劣だったら、そんなことが出来るのだ。

「…ルティス帝国とシェルドニア王国との貿易も、今でこそだいぶマシになってるけど…始まった当初は、もっと不平等な貿易だったんだよ」

と、ユナが教えてくれた。

ルティス帝国とシェルドニア王国との貿易…。

「あのとき、ルティス帝国は不況の折で…。『青薔薇連合会』も、国内で商売するのが難しかったんだと思う」

「…それで、豊かなシェルドニア王国に活路を見出して…。不平等な条件で、貿易を始めさせた訳だね?」

「うん…」

…そんなの、もう貿易じゃない。

ただシェルドニア王国を脅して、押し売りしてるようなものだ。

今でこそ、かなり貿易の条件は対等になってきているが…。

それでも、ルティス帝国に有利な交易であることに変わりはない。

それはルレイア・ティシェリーが、シェルドニア王国の女王様を脅して、そのように仕向けているから。

そう考えれば、辻褄が合う。

全ては、あのルレイア・ティシェリーが仕組んだことなのだ。

「国内のみならず、他国の人まで巻き込むなんて…」

こんなことを、いつまでも続けさせてはいけない。

シェルドニア王国の富は、シェルドニア王国のものだ。

シェルドニア王国の国民の為に使われるべきであって、決して『青薔薇連合会』に貢がせる為に存在している訳じゃない。

このままでは、シェルドニア王国は徐々に疲弊し、最悪経済が成り立たない事態に発展しかねない。

そうなるかもしれないって、分かっているのか?ルレイア・ティシェリーは。

何の罪もないシェルドニアの人々を苦しませて、何とも思わないのか。

…思わないんだろうね。

だからこそ、こんな卑劣なことが出来るのだ。

「止めないと…。シェルドニア王国の為にも、ルレイア・ティシェリーを…」

私がそう呟いた、そのとき。

「大変だ、ブロテ」

「アンブロ…?どうしたの?」

同じく自警団仲間のアンブロが、険しい顔をして部屋に入ってきた。