「…?どうしたんですか、ルルシー」

どうしたんですかじゃない。 

お前がどうしたんだよ。

ちょっと色々聞き捨てならないから、1から説明してもらおうか。

「何やろうとしてんだ?お前らは。ちょっと目を離したら…」
 
絶対ろくなことじゃないに決まってる。

椅子から立ち上がって、ルレイアに近づこうとしたら。

「あ、ルルシーゴーグル無しで近づいたら、」

「うっ…」

「あー…。言わんこっちゃない」

ドラゴンズ・ブレスの凄まじい威力に、ゴーグルをつけていなかった俺は、後ろにひっくり返りそうになった。

目が燃える。

「大丈夫ですか?ルルシー」

「迂闊に近寄ると、痛い目を見るぞ。ルルシー先輩。これはかの名高きドラゴンズ・ブレスだからな」

そんな危険物を、俺の部屋に持ち込むんじゃねぇ。

ルレイアが、俺に真っ黒のレース付きハンカチを差し出してくれたので。

有り難くそれを借りて、両目を押さえた。

はぁ…危ないところだった…。

…。

…って、一息ついてる場合じゃない。

「お前ら、何を企んでるんだ?」

「はい?」

とぼけたって無駄だぞ。

さっき聞いたからな、俺。

お前今、聞き捨てならないことを言ってただろう。

「お前ら、さっきから俺の部屋で何をやってるんだ」

「嫌がらせカラーボールを作ってます」

潔いな。やっぱり嫌がらせ目的なのか。

まぁ、それ以外に用途なんてないわな…。

「何か駄目でした?」

「…駄目ではない」

勘違いしないで欲しいが、俺は別に、カラーボールを作ってることに文句を言っている訳ではない。

別に良い。嫌がらせカラーボールを作る行為自体は。

馬鹿馬鹿しいように見えて、意外と有事には役に立つと知ってるからな。

これまで何度も、ルリシヤのお手製カラーボールに助けられてきた。

だから、カラーボールを作る行為そのものは別に良い。 

問題は、その開発を俺の部屋でやるなってことと…。

「…誰にぶつけるって?」

「はい?」

「それを誰に投げつけるって?」

「ルシードです」

大問題。

聞き捨てならない大問題だ。

覚えているだろうか、ルシード・キルシュテンという人物を。

彼はシェルドニア王国の女王、縦ロールおばさんこと、アシミム・ヘールシュミットの腹心である。

ルレイアに言わせれば、アシミムの腰巾着…らしいが。

あれでかなりの実力者であり、アシミムにとっては頼りになるボディーガードだろう。

シェルドニア王国で一悶着あった相手だが、何故その人物に、激辛カラーボールをぶん投げるという事態になるんだ。

「何でそんなことをするんだ?」

「え?だってムカつくじゃないですか」

「…」

…そんな適当な理由で。

ルシードはドラゴンズ・ブレスやら、シェルドニアジゴク何たらいう素材で作った、嫌がらせカラーボールを投げられるのか。

たまったもんじゃないな。気の毒に。