The previous night of the world revolution7~P.D.~

「悪いが、この話はここまでだ。俺は今日、何も聞かなかったことにして帰るつもりだ」

「…」

そんな顔をするなよ。俺だって鬼じゃない。

「心配するな。このことは、『青薔薇連合会』には言わない。一応あんたらも顧客の一人だからな」

客の情報を漏らしはしない。それは安心してくれ。

『M.T.S社』は、『青薔薇連合会』に今日の話をバラされたら、一発で首を切られるに決まってるから、気が気じゃないんだろう。

「…そうですか。悪くない話だと思ったのですが…」

まぁ、話自体は確かに悪くないな。

国内で初めて開発に成功した新兵器の売買を、俺達に独占させてくれるって言ってるんだから。

それを断るなんて、愚の極みなのかもしれない。

…が、この話に乗るべきではない。

俺の長年の勘が、そう言ってるんだよ。

こういう勘には従っておくべきだ。人生のコツだよ。

後になって、痛い目を見るのは自分だからな。

ましてや、今の俺は『オプスキュリテ』という組織を率いる身。

もし万が一のことがあったら、俺が責任を取るだけでは済まない。

「分かりました。色の良い返事を頂けなかったのは残念ですが…。もし気が変わるようなことがあれば、一報お願いします」

「あぁ、分かった」

心配しなくても、そんな日は永遠に来ない。

「では、今日のことはくれぐれも他言無用で…」

そう言い残して、『オプスキュリテ』と『M.T.S社』の商談は、破局という形で終わった。

俺は後に、今日のこの日の選択を、心から感謝することになる。