The previous night of the world revolution7~P.D.~

夏フェス会場では、他にも様々なコラボメニューを売っている。

「ルルシー、あっちも食べに行きましょう」

「今度は何だ…?」

「ほら、あれです」

俺は、ソフトクリームと同じく長蛇の列を作っているキッチンカーを指差した。

大きな看板に、目玉のコラボメニューの写真が大々的に貼り出されていた。

いやはや、これもまた良い色だ。

「ね?美味しそうでしょう?」

「…」

しかし、ルルシーは無言。

無言のまま、しかも真顔で看板を見つめていた。

きっとあまりに美味しそうで、言葉を失ってるんだろうなぁ。

分かる分かる。分かりますよ。

こちらの商品も、企業努力の賜物ですから。

「…これは何なんだ?」

「サンドイッチですよ」

それも、流行りのフルーツサンドという奴だ。

生クリームとフルーツが挟まれているサンドイッチ。

「それは見たら分かる。…何でサンドイッチが黒いんだ?」

「ただのサンドイッチじゃありません。夏フェス限定、ブラックサンドイッチですから」

格好良いネーミングだと思いませんか。

こちらの商品も、先程のソフトクリームと同様。

サンドイッチのパンも、挟んでいる生クリームも、フルーツも、全てが真っ黒である。

「…食欲失せる色だな…」

と、ルルシー。

何処が?

めちゃくちゃ美味しそうじゃないですか。

「じゃあ、これも買ってきますね」

「あ、こら。普通に並べよ。裏口入店するな」

「こんにちはー。ルレイアですよーさっさと売ってください」

「不正をするな馬鹿。不正を」

ルルシーに怒られながら、俺は再び店員に顔を見せ、特別に待ち時間なしで購入。

え?ズルい?

スポンサー特権ですが、何か問題でも?

権力っていうのは使う為にあるんですよ。

「どうぞ、ルルシー。食べてみてください」

「食欲は全くそそられないが…。…味は悪くないな」

「でしょう?」

この見た目と味で、話題沸騰間違いなしですよ。

「他には何が食べたいですか?ルルシー」

「え?いや、別に…。…ちなみに、他には何があるんだ?」

他には?

色々ありますよ。

三日目通い詰めても観客が飽きないよう、かなりの種類を用意させたから。

「屋台の定番、焼きそばやピザやクレープや…」

「へぇ。そんなのもあるのか…」

「あとはかき氷とか、チョコバナナとか。きゅうりの一本漬けなんかもありますよ。夏ですからね」

「意外と普通なのもあるんだな」

黒ソフトクリームと黒サンドイッチが普通じゃなかった、みたいに言わないでくださいよ。

「ちなみに、それらも全部黒です」

「…ピザとかクレープはまだ分かるが、黒いかき氷と黒いきゅうりは何なんだ…?」

それはあれですよ。

企業秘密って奴です。

「今回の夏フェスのテーマは、『ブラックサマー』ですから」

「何でもかんでも、黒ければ良いってもんじゃないだろ…」

俺は良いと思いますけどね。

現に、この三日間…フードメニュー含むコラボグッズの数々、めちゃくちゃ売り上げ良いですから。

黒は需要があるってことですね。