The previous night of the world revolution7~P.D.~

フードエリアでは、様々なコラボメニューを販売しているが。

俺のイチオシは、なんと言っても。

「ルルシー、あれ。あれ食べに行きましょうよ」

「あれって…?」

「ほら、あのキッチンカーですよ」

「あぁ…ソフトクリームか?」

キッチンカーには、大きなソフトクリームの絵が描いてあった。

そう、ソフトクリームです。

でも、ただのソフトクリームじゃないんですよ?今回は。

「ソフトクリーム、食べに行きましょう?」

「それは別に良いけど…。…めちゃくちゃ並んでるな」

並ぶ?…あぁ、客の列のことか。

時期が時期だし、今日も結構暑いし。ただでさえ、冷たいソフトクリームが欲しくなることだろう。

その上、今回あのソフトクリーム店は、夏フェス限定のコラボメニューを販売している。

皆コラボメニューを求めて、長蛇の列を作っているのだ。

分かる分かる、分かりますよ。

あのソフトクリーム、本当素敵でお洒落ですもんね。

食べたいですよね、皆さん。

力を入れた商品がよく売れていて、俺もスポンサーとして鼻が高いですよ。

…で、それはそれとして。

「まぁ良いか…。まだ時間もあるし、ゆっくり並ぶとするか」

そう言って、ルルシーは律儀に長蛇の列の一番後ろに並ぼうとした。

素直で良い人ですね、ルルシーは。

でも、今回はそうする必要はないんですよ。

何せ俺は…この夏フェスの企画者であり、出資者なのだから。

「大丈夫ですよ、ルルシー」

「?何が大丈夫なんだ?」

「並ばなくても大丈夫です。だって…」

俺は列を離れ、店の裏口から、キッチンカーの窓をノックした。

中は大忙しなのだろう。少し待ってから、ようやく店員さんが顔を覗かせた。

「はい。何か御用ですか?」

えぇ、御用ですよ。

「コラボソフトクリーム、二つもらえますか」

これぞ裏口入学、ならぬ。

裏口入店である。

しかし、バイトらしいその若い女性店員は、困ったように顔をしかめた。

「あの、申し訳ございませんが、列に並んでもらえますか?」

どうやらこのバイト、俺のことを知らないようだな。

「成程、それじゃ店長さんにこう伝えてもらえますか?」

「はい?」

「『ルレイアが来た』と。それで分かるはずです」

「は、はぁ…。承りました…」

アルバイト店員は、首を傾げながらキッチンカーの奥に引っ込んでいった。

一応、店長への伝言は引き受けてくれるつもりらしい。

なら、話は早いな。

すると、突然キッチンカーの裏口が開いた。

「お、お、お、お待たせしましたっ…!」

青ざめた店長が、両手にコラボソフトクリームを持って、急いで現れた。

「も、申し訳ありません。先程の店員はアルバイトでして、あなた様のことを存じておらず…」

「苦しゅうない、苦しゅうない。ソフトクリームがもらえれば満足ですよ」

「は、はい。誠に申し訳ございませんでした…!」

「じゃ、もらっていきますね。まだまだ客足が途絶える様子はないので、頑張ってください」

「はい。ありがとうございます…!」

深々と頭を下げる店長から、ソフトクリームを受け取り。

片方を、ルルシーに手渡した。

「…ね?並ぶ必要はないって言ったでしょう?」

「…お前って奴は…」

それは褒め言葉ですよね、ルルシー。