The previous night of the world revolution7~P.D.~

―――――――…その頃、帝国騎士団では。




「…それで、帝国自警団の動きは?『青薔薇連合会』に立ち入り調査を行ったんだろう?」

頭が痛くなる隊長会議の折、俺はそう尋ねた。

帝国自警団が、『青薔薇連合会』本部に立ち入り調査を敢行する。

この話を最初に聞いたときは、思わず耳を疑った。

帝国自警団が何やら、『青薔薇連合会』に並々ならぬ感情を抱いていることは知っていた。

しかし、まさかこれほど性急な手を使うとは。

…いや、並々ならぬ感情を抱いているのは、自警団ではなく…。

あのブロテという団長だろうな。恐らくは。

今回の立ち入り調査の決定も、ブロテが下したのだろうし。

『青薔薇連合会』を家探ししてまで、奴らを締め上げる証拠が欲しかったか?

気持ちが分からなくもないが。

…しかし。

「今のところ、特に動きはないようだ」

と、ルシェが答えた。

ルシェは今回、帝国自警団の動向を探る役目を、自ら買って出た。

その理由は明白だ。最早言うまでもない。

ルシェは、帝国自警団に『青薔薇連合会』を潰されると困るのだ。

何せ『青薔薇連合会』には、ルシェの大事な肉親がいるんだからな。

ま、その肉親は、ルシェのことを肉親だとは思ってないだろうがな。

…それはともかく。

そうか。あれ以降、まだ動きはないか…。

…無理もないと言うべきか。

立ち入り調査を行っても、『青薔薇連合会』を咎める口実は見つからなかった。

当たり前と言えば、まぁ当たり前だな。

そんなことでみすみすボロを出す奴らなら、俺達だってこんなに骨を折ってない。

アポ無しで押しかけたとしても、俺達が望むような証拠は何も見つけられないだろう。

そこまで馬鹿じゃないさ、あいつらは。

だからこそ、俺達もこんなに苦労させられているのであって…。

「結局…自警団が立ち入り調査しても、何も出てこなかったか…」

「ま、妥当だな」

それどころか、あいつらは痛くも痒くもないだろうよ。

多少脅かしたくらいじゃ、むしろ嬉々として面白がるくらいだろう。

特にルレイアはな。

今頃、呑気に遊びに行く計画でも立ててるんじゃないか?

「自警団が何を企んでいたとしても、あのブロテごときには、ルレイアは御しきれんだろ」

「そうだな…」

「いずれにしても、我々には関係のない話だ」

と、アストラエアは取り付く島もない。

これまで何度も『青薔薇連合会』とは協力体制を取ってきたにも関わらず、薄情なように聞こえるが。

今回ばかりは、俺もアストラエアに同意である。

帝国自警団が『青薔薇連合会』に何をしようと。立ち入り調査だろうと強制捜査だろうと。

俺達帝国騎士団には、関わりのない話だ。

…と言うか、関わってはいけないのだ。

何故なら、帝国騎士団と帝国自警団には、互いに不干渉、不可侵の原則があるからである。