The previous night of the world revolution7~P.D.~

し、か、も。

それだけじゃないんですよ。

俺達が『ポテサラーズ』の歌を歌わせてもらうだけじゃなく。

なんと『ポテサラーズ』のお二人も、『frontier』作曲の歌を歌ってくれるんです。

こんな光栄なことってあります?

これを聞いたときも、俺の心臓はぽーんと飛び出して、彼方に消えていった。

俺の心臓、いくつあっても足りません。

同じ舞台に立たせて頂けるだけでも、こんなに光栄だというのに…。

ましてや俺達の歌を、『ポテサラーズ』が歌ってくださるなんて。

涙出そう。本当、涙出そうですよ。

涙がちょちょぎれます。

でも、これって現実なんですよね。夢じゃないんです。

何回もベーシュさんにチョップしてもらいましたけど、やっぱり夢が覚めなかったから。

今でも現実とは思えないけど、夢じゃないならこれが現実なんでしょう。

『ポテサラーズ』の他にも、今回夏フェスで同じ舞台に立つアーティストは、思わず感嘆の溜め息が出てしまうほどの有名人ばかり。

彼らと同じ舞台に立ったら、俺、あまりの存在感の薄さに消えるのでは?

誰にも存在を認識してもらえず、観客達は「あれ?ルトリアいたっけ?」ってなりそう。

「まぁルトリアはいなくて良いか」と言われそう。

有り得る。充分有り得る。

あれだけ豪華メンバーが揃ってたら、俺なんかいなくてもバレませんよ。

むしろ、いない方が良いまである。

それなのに、何故か今回の夏フェスの大トリは、俺達『frontier』なんですよね。

絶対『ポテサラーズ』の方が適任だから、代わって欲しかったよ。

でもこればかりは仕方がない。

今回の夏フェスの企画は、『frontier』のスポンサーである『R&B』事務所の、上の人が決めたことだから。

つまりは、あの、真っ黒いゴスロリの人が…。

夏フェスのグッズを作らせたのも、彼だと聞いている。

まーた俺のTシャツまで山程作っちゃって、売れ残っても知りませんからね。

おまけに、今回は他アーティストの分もグッズが販売されるそうで。

ますます、ルトリアデザインのグッズなんて誰も買いませんよ。

大量に売れ残ること間違い無し。

皆『ポテサラーズ』のグッズが欲しいに決まってるもんなぁ。

「大丈夫?ルトリア。チョップ要る?」

と、ベーシュさんが声をかけてきたことにも、俺は気づいておらず。

「まわわわわわ。はわわわわわ」

「…要りそうだね」

「…ベーシュ、軽くな。軽くやるんだぞ。今日に至るまで、この夏フェス企画だけで何回ベーシュチョップを食らわせたか。いい加減ルトリアの頭が割れる」

「うん、分かった。軽く、軽くね」

軽く…ベーシュさんは片手をを振り上げ。

「ぷぎゃっ!!」

ベチコッ、と俺の頭に火花が散った。

お陰で、現実が俺の前に帰ってきた。

「あ、あれ…?俺は何処?ここは誰…?」

「…まだ正気に戻ってない?やっぱり威力控えめだったから…」

「だ、大丈夫です。大丈夫ですから」

ニ発目を装填しようとするベーシュさんを、俺は慌てて止めた。

ニ発目なんか食らったら、俺の脳細胞が死滅してしまう。

それは別に構わないのだが、折角覚えた素晴らしい『ポテサラーズ』の書き下ろし曲の歌詞まで一緒に昇天してしまったら。

折角曲を提供してくれた『ポテサラーズ』のお二人に、申し訳が立たない。

「そっか。分かった。じゃあやめとくね」

「あ、ありがとうございます…」

と言うかベーシュさん、今ので威力控えめだったんですか?

なんか、日を追うごとに…ベーシュさんチョップの威力、増大してるような気がするんですけど。

ベーシュさんも成長したってことですか。そうですか。

何でも成長するのは良いことですね。俺の頭はいつか割れそうですけど。