ねぇ、ちょうだい?



 …あれ、あの人どっかで見たことがあるような。


「きゃぁぁあ!!さっ、早乙女(さおとめ)先輩!!」


 突然クラスの女子がそう叫んだ。


 さおとめ先輩?


「蒼桜、知ってる?」


 私は目の前に座っている蒼桜に話しかける。


「…まぁ、一応ね。なんかすごい人気らしいよ」


 えー、蒼桜知ってるの?


 知らなかったの私だけか…。


 私の無知さを実感しながら再びドアの方に目を向けると、その先輩は私たちの教室の中をぐるりと見回していた。


 …誰かを探してるのかな?


 お弁当を少しずつ口に運びながら見ていると、


「…っ?」


 ふいにその先輩と視線が交わったような気がした。


 気のせいかと思ったけど、その瞬間、先輩が教室の中に入って来て、私の目の前で足を止めた。


 背の高い先輩を見上げ、困惑する私。


 上から無言で私を見下ろす先輩。