ねぇ、ちょうだい?



「…七海、チョコちょーだい」


 と、先輩は私のすぐ横に腰を下ろす。


 え、チョコ…?


「…ーーあれ、先輩、白雪先輩のチョコをもらったんですよね?」


「…白雪?いや、もらってないよ」


 え?

 
 白雪先輩が言ってたことと、違う。


「え?いや、先輩、今年はバレンタイン誰からも貰わないって。…ーーだから白雪先輩のを受け取ったってことは、そういうことなんですよね?」


「だから受け取ってないって。…ーーなんか勝手に机の中に入れてたけど、返したし」


 …え?


 櫂先輩が言っていることをすぐに理解できなくて、頭が混乱する。


「だーかーら。俺は白雪のチョコを受け取ってないし、俺が欲しいのは七海のチョコなの」


 と、先輩は私の顔を両手で挟んで、先輩の方を向かせて言った。


「…私のチョコ、ですか?」


「…ん」


 先輩は私の頬から手を離して、私の方をじっと見つめた。


「…すいません、チョコ、作って来てたんですけど、さっき食べちゃいました」


 もう渡せないと思ったから。


「…チョコないの?」


 先輩の心なしか残念そうな声に、申し訳なく想いながらうなずく私。


「だれか他のヤツにチョコ渡した?」


「友達の蒼桜と、あと壮馬に…」


「…壮馬?」


 あれ、なんか壮馬の名前を言った瞬間、先輩の放つオーラがピリッとしたような…。


「はい、幼なじみの男の子です」


 と私が言うと、先輩はふーん、と言った。