…ーー先輩とのたくさんの思い出が、次から次へと走馬灯のようによみがえる。


 本当に、楽しかった。


 それもこれもこれでもう終わりだと思うと、とても胸が締め付けられる。


 初めて人に恋をして、好きという感情を知って、これから頑張ろうとしてたのに。


 ため息をついてうつむくと、ポタッと雫が2つ、床を濡らした。


 そして1つ、また1つと、それは次々に増えていった。


 私はしゃくりながら、先輩のために作ったチョコの袋を開け、その中の1つを手に取った。


 ゆっくりと重い腕を持ち上げて、チョコを太陽にかざす。


 …お菓子に罪はない。


 私はそのチョコをそのまま口へと運んだ。


 甘いチョコが口いっぱいに広がる。


 でも、私の心はこの甘いチョコとは裏腹に、とっても苦かった。


 …先輩に、このチョコ食べて欲しかったな。


 そんな叶わないことを想いながら、1つずつチョコを口に含む。


 そして最後の1つを食べ終えたところで、急にドアがバンッと勢いよく開いた。


「…はぁ、はぁ」


「えっ、か、櫂先輩…?」


 そこにはなぜか、急いで来たのか肩で息をしている櫂先輩がいた。