「…ーーあれ、私なんでここに」


 気がつくと、私はなぜか屋上へと続くドアの前にいた。


 …もう、無意識に屋上に来るなんて、私、どれだけ先輩に会いたいの。


 というか、もう先輩にお菓子を作ることも無くなるんだな。


 さらに気持ちが沈みそうな気がしたけれど、私は屋上へと足を進めた。


 …ーーもちろん、屋上には誰もいなかった。


 ただサァッと少し肌寒い風が吹き抜けていくだけだった。


 私はよく先輩と並んで座っていたところに腰を下ろして、壁に体を預けた。


『…一緒に食べねぇの?』


 初めて一緒にお菓子を食べた日。


 私が食べようとしてたマシュマロを、先輩が横から奪って食べたっけ。


『あーん、して?』


 先輩にクッキーを食べさせた日。


 …今思い出しても顔が赤くなるくらい、あれは恥ずかしかったな。


『えー、だめ?…俺、七海の可愛い顔見てたいのに』


 先輩に誘われて、一緒にスイーツを食べに『シュクレ』に行った日。


 まさか先輩とカップルとしてお店に入るとは思わなかった。


 あと、たしかこの後先輩に言われて、早乙女先輩呼びから櫂先輩呼びに変えたんだよね。