「じゃあね、七海」


「うん!バイバイ、蒼桜」


 今日の授業が終わり、放課後になった。


 蒼桜は、私のことを一日中ずっと心配してくれた。


 だから私は心配させないように、いつもより明るく振る舞った。


 …ーーけど、もらってくれないとわかっていても、渡したいという気持ちはまだある。


 私は一度先輩に会おうと、チョコの入った袋を手に、廊下に出て階段に向かった。


「…ーーあれ、澪川七海じゃないの」


 すると階段を降りてくる白雪先輩とはちあわせた。


「し、白雪先輩…」


 正直、今1番会いたくなかった。


「…あなたまさか、櫂にチョコ渡そうとしてない?ホント身の程知らずね」


 と、私の手元に目を向けて言った。


「…ーーま、渡そうとしたところで受け取ってはもらえないでしょうけどね」


「…知ってます」


「ふーん。でも私は受け取ってもらえたから」


 と、嫌味たらしく言って、白雪先輩は私の横を通り過ぎて階段を降りていった。


 …白雪先輩のチョコを、櫂先輩が受け取ったーー?


 ということは、白雪先輩と櫂先輩は…。


 なんて、信じたくない現実が私に突きつけられた。