…なんか、七海の様子がおかしい。


 授業中はずっと下を向いていて、休み時間に声をかけても、心ここにあらずというような感じで、朝のような笑顔は1回も見られなかった。


 昼休みになり、私は再び七海に声をかけた。


「…七海、どうかした?」


 私が声をかけると、七海はビクッと肩を震わせた。


「…なんでもないよ」


 と言って、七海はへらっと笑った。


 …私にはわかる。


 こんな風に七海がへらっと笑う時は、絶対に何かある時。


「なんでもないわけない。…話して?」


 私がそう言うと、七海は笑った顔を崩して、下を向いた。


「…先輩、誰からもチョコ貰わないんだって」


 と、七海が今にも泣き出しそうな暗い声で言う。


 …そういうことね。


「それって、先輩が自分で言ってたの?」


 私の言葉に、七海は首を横に振る。


「それならさ、それがホントかわかんないじゃん」


 私がそう言うと、七海はうん…と言葉を濁した。


「よぉ。…あれ、七海どうした?」


 と、壮馬がやって来た。


「壮馬。…うん、ちょっとね」


 さすがに壮馬には言えないな。


 私の曖昧な答えに、さらに首を傾げる壮馬。


 と、その時。