今日は遂にバレンタインの日。


 先輩のために、蒼桜と一緒に心を込めて作ったチョコを持って、教室に入る。


「おはよう、七海。…ちゃんと持って来た?」


 何を、かは言わなくてもわかる。


「もちろん!」


 私は笑顔でそう答えた。


 教室の雰囲気は、ほんのりピンク色。


 女子も男子も、心なしかソワソワしている。


 …ーー今日、私は先輩にチョコを渡すんだ。


 チョコを渡した時の先輩の表情を想像していると、ふとこんな話が聞こえてきた。


「やっぱり早乙女先輩、大人気だねー」


「たくさんの女子に囲まれてて、すごかったもんね」


 …やっぱり、先輩人気者なんだ。


 わかってはいたけど、少し胸がチクリと痛む。


 最近先輩と一緒にいて忘れてたけど、私にとって先輩は雲の上の存在。


 …それなのに、チョコ、渡せるのかなぁ。


 と、先輩に渡す勇気が少しずつしぼんできたその時、私の心を折るような言葉が聞こえてきた。