ねぇ、ちょうだい?



「早乙女先輩、今日は本当にありがとうございました!」


 スイーツを食べ終わって店から出て来た私たち。


 外に出てすぐ、私は先輩にお礼を言った。


「喜んでもらえてよかったよ。…あ、七海ここから家って遠いの?」


「いえ、歩いてすぐです!」


 私がそう言うと、先輩はそっか、と言った。


「…ーーそれとさ」


「はい?」


「いつまで俺のこと、"早乙女"先輩って呼ぶの?」


「…えっ?」


「俺はさー、七海って呼んでんのに、七海は俺のこと名字じゃん」


 確かに、私はいつも先輩のことを"先輩"か、"早乙女先輩"って呼んでる。


「いつになったら俺のこと、名前で呼んでくれるのかなぁって思ってるんだけど」


 せ、先輩のことを、名前で…!?


「あ、もしかして俺の名前知らない?」


「し、知ってます!」


 知ってる。


 白雪先輩に呼び出されたあの日に知った。


「へぇ」


 と、いかにも言ってみろよ、みたいな雰囲気で言う先輩。


 …先輩、絶対言えないと思ってる。


 そこで私は恥ずかしいのを抑えて、


「…か、櫂先輩」


 と言った。


「…っ!?…ーーやば」