「ーーよし、頑張れ、私」


 昼休み。


 私は今、右手に今日のお菓子であるクッキーの入った袋を持って、屋上の入り口前にいる。


 …先輩に渡せないのはわかっていても、私お菓子作って来てるんだもんなぁ。


 私は自分を鼓舞し、思い切って屋上へと続くドアを開けた。


「…わっ!?」


 すると屋上から出てこようとしている人とぶつかりそうになった。


「…え、七海?」


 見上げると、そこには私が会いたかった早乙女先輩がいた。


 なんか本人を目の前にすると、さっきまで言おうとしていたことが白紙になって、口の中がカラカラに乾いた。


 私が何も言えずにいると、


「…どうして、いるの」


 と、私のことを見下ろしながら先輩が言った。


 どうして、いる…?私、やっぱり嫌われてた…!?


「…ーーすっ、すいませんっ!!」


 私はここからすぐにどっか行かなきゃと思って、くるりと早乙女先輩に背を向けて立ち去ろうとした…ーーが、途端に甘いムスクの香りに包まれた。