「…ちょ、あの!!」


 早乙女先輩は、私のことなんてお構いなしに、人をかき分けて廊下を進む。


 廊下や教室にいる人は、私たちのことをとても不思議そうに見ていた。


 人気者の先輩に腕を掴まれてどこかへ連れて行かれている地味な女子って、どんな状況…!?


「…ここならいいか」


 屋上に着いた途端、私の腕は自由を取り戻した。


 先輩はゆっくりと振り返って私のことを見下ろす。


 私は先輩の肩ぐらいまでしかないので、とても見上げなければいけない。


 その身長や先輩が出すミステリアスな雰囲気もあいまって、先輩がとても怖く思えた。


 すると突然先輩が無言で私の方へと向かって来た。


「え?あの…」


 ジリジリと壁際に追い詰められる私。


 そしてついに、背中がトンッと壁にぶつかった。


 な、なに…!?


 私は思わず目をつぶった。


 …が、特に何も起こらず、頭上から声が降って来た。