ねぇ、ちょうだい?



「えっと、あの、どうしたんですか…?」


 沈黙に耐えきれなくなった私は、ついに自分から話しかけた。


 クラスメイトの女の子たちも、息をのんで私たちを見守っているのがわかった。


 私が問いかけても、先輩はまだ何も言葉を発さなかった。


 しかし、少しして、


 グイッと先輩が私に顔を近づけた。


「えっ!?ちょ、なっ…!?」


 そしてすぐに離れた。


 先輩の甘いムスクの香りが、私の鼻をかすめた。


「…やっぱり」


 それが先輩がここに来て初めて発した言葉だった。


 や、やっぱりって、なにが…?


 さらに頭の上にハテナを浮かべる私。


 パッと蒼桜の方を見て助けを求めるけれど、蒼桜の方も相手が先輩だということもあって、どうしたらいいのかわからず首を横に振るだけだった。