「そういえば、ブラックプレートつけてないんですね?」
歩きながら八巻くんが聞いてきた。
「あぁ、うん……。とりあえず、認めてもらえるまではこれでいいかなって」
わたしの胸にはみんなと同じ、一般生徒を示すシルバーのネームプレートがついている。
佐紺先輩からもらった総長の証であるブラックプレートはポケットの中。
つけるにはまだ早いと思ってつけていない。
「そうですか……。ごめんなさい、僕のせいですよね。ただでさえ総長のことで大変なのに、こんな一歩間違えたら大問題になる仕事を任せてしまって……」
「八巻くんのせいじゃないよ。任せたのは佐紺先輩だし。それに、大変だけどやりがいはあるから」
「やりがい、ですか?」
「なにもしないよりは、なにかしてたほうがわたしの性に合ってるというか。大変だけど楽しいよ。みんなもいるしね」
「……そうですね。僕も楽しいです」
八巻くんは嬉しそうに微笑んだ。
1人でやるのがよほど大変だったんだろうな。