「苫、斑。どうだ遠足委員のほうは。うまくいってるか?」


遠足10日前の夜。

お風呂上がりに居間で遠足の行き先をネットサーフィンしていると、おじいちゃんがやってきた。


濃紺の羽織を着こなすおじいちゃん。
手には、3つの湯呑みが乗ったお盆。


おじいちゃんは和がよく似合う。


西ヶ浜家は代々、和の家系らしい。家は縁側がある日本家屋だし、結婚式は神前式だし。


わたしも大きくなったら和が似合う大人になるのかな、と淡い期待を抱いてる。


おじいちゃんは、わたしと斑の前にそれぞれ湯呑みを並べると、「よっこらせ」と腰を下ろした。


「バスは手配できそうなんだけど、行き先が……」


まだ決まらない。


いろいろ案は出しているのだけれど、どうしても『参加人数500人』の条件が厳しくて……。


ただ、バスのほうは、行き先のスケジュールを出してくれたら押さえるという約束まで取りつけることができた。


すべては八巻くんの根性とハルルの能弁のおかげだ。