去年の12月のことだった。


黒刃高校に転校してくる前、わたしはとなりの市にある私立の女子校に通っていた。


だけど、2学期を締める終業式の日。式が行われていたまさにそのとき、ある事件が起こった。


──ブロロロロロ。

──出てこーいッ!


突然の轟音と男たちの叫び声。


そのあたりでは有名な不良たちが、バイクで乗りこんできたのだ。


彼らはある人物を探していた。


その人物を連れ去れば巨大な力が手に入る、という根も葉もない噂を聞きつけて。


彼らはしきりに叫んでいた。


──西の花姫はどこだ、と。


女子校に不良集団が乱入なんて大騒動、黒刃市だったらどこかしらの組のヤクザが助けにきてくれただろう。


でも、ここは黒刃市じゃない。
頼れる人はだれもいない。


騒動は、先生が呼んだ警察のおかげでなんとか収まったけれど。


警察沙汰になるほどの騒動を、わたしは起こしてしまった。

わたしが原因で、学校のみんなを怖がらせてしまった。


特別扱いされたくなくて黒刃市を出たのに、結局わたしは、黒刃市で生きていくしかないんだ。

そう悟るには充分なできごとだった。


そうしてわたしは、2年に進級するタイミングで黒刃高校に転校した。